4月後半入り、ようやくこの村も陽気な季節になり過ごしやすくなってきた。
桜も満開で綺麗で桜まつりは大成功となった。
その夜、村の人達から御礼がしたい、と急遽打ち上げが始まった。
それと同時に私が村に帰ってきた事の歓迎もしたいと言い出し。
私の歓迎会も執り行う事となった。
私に挨拶をして欲しいと、言われ何も考えてなかったので取り敢えず。
の一言で終わらせると。
等の野次を飛ばされながらも打ち上げ&歓迎会が始まった。
たまたま通り掛かった観光客も飛び入り参加する人も居て大宴会となった。
気の合う仲間達と話しが弾み、所々で笑い声が上がる。
緑子さんは相変わらずの人気で複数のおじ様達相手にお酒を飲みながら楽しげに話しをしている。
恭平は厳つい酔っ払いのおじさんに肩を組まれペコペコしながら話しをしている。
私は桜まつりでお世話になった方々にお礼を兼ねて挨拶に廻った。
挨拶が一段落した頃には人が疎らになっていた。
何人か帰った様である。
私は周りを見渡すと緑子さんが人混みから離れた桜の木に寄りかかって物思いに耽っている。
タバコを吸っているのか、時折上を向き煙を吐く仕草をしていた。
その表情に笑顔は無く何処か遠くを見て溜息を漏らし何か悩んでいる様だった。
私が緑子さんに話し掛けようと近寄ろうとしけど村の人に呼び止められ、緑子さんに声を掛けられなかった。
村人の話を終え再び緑子さんを見るとおじさん達に囲まれ楽しそうに話している。
私の気のせいかな?
緑子さんは何時もと変わらない笑顔で話している。
打ち上げ&歓迎会は自然と終わり解散することとなった。
恭平は右手を挙げて私に手を振ると緑子さんを探して走り出した。
こんなんで本当に大丈夫だろうか?
あの二人は・・・
突然、突風が吹き月の光に照らされ白紫色の桜並木がガサガサと揺れ花びらが舞い散る。
その光景を見た私は不気味な感覚になり不吉な予感がした。
何が起こる前触れの様な気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。