第2話

短編集2 jm
3,340
2020/01/16 01:18

夏の魔法にかけられ。



となりの席の君は
たいてい窓の外を眺めている。

友達と話すでもなく、
先生の話を聞くでもなく
ただ、ぼーっと眺めている。


それでも僕が話しかけると
ちゃんと答えてくれる。


黒髪を2つ結びにし、眼鏡をかけ
膝丈のスカートそんな君。


今週末クラスの何人かで
花火大会に行くことになった。
君も来てくれたらなあ。


『あなたちゃん』

「ジミンくんどうしたの?」

帰ろうとする君を呼び止める。

『今週末予定空いてる?
 みんなで花火大会行こうって
 話してるんだけど』

すこし驚いたような顔をする君

「‥わたし、友達いないよ?」

すこし申し訳なさそうに遠慮がちに
つぶやく君に

『僕と友達じゃん』

なんて、自分で言った"友達"の言葉に
気分を落としながらも

「‥そうだね、迷惑じゃないなら」

と花火大会に来てくれることになった。



当日は18時に最寄りの駅に集合。
みんなが着々と集まってくる。

"ねぇジミン、わたしたちの浴衣姿どう?"

クラスの女の子が次々目の前で
ファッションショーしている。
正直、君の浴衣姿以外興味ないが、

「似合ってるよ』とだけ言っておく。


すでに集合時間を過ぎたのに
君の姿がない。

もしかして、やっぱり嫌になったかな。
なんて思いながら
やっとの思いで聞いた番号に電話する。
人混みだからか、電波が遠い。


みんながそろそろ行くか。なんて話してると

「ごめんね、お待たせしました」

少し息を切らし僕に近づいてくる君。

「集合時間に着いてたんだけど
 反対側でずっと待ってた」

声がすごく焦っていて、必死に説明する君。

その姿が、なにより君の浴衣姿が
綺麗すぎて言葉にならない。

「…ジミン‥くん?」

何も返事をしない僕を覗き込む君。

『‥浴衣、すごくかわいい』

と口にすると、ふふっと笑って

「ありがとう。
 ジミンくんも、浴衣似合ってるよ」

なんて。お世辞と思われたのだろうか。
本当に綺麗なのに。


みんな集合し露店に向かって歩き出す。
急にクラスの男に引っ張られ、

"なあなあ、あなたちゃんって
あんなに可愛かったか?眼鏡もしてねーし"

なんて言ってくる。
軽々しくあなたちゃんなんて呼ぶな。
と言いたくなったのを我慢して、
肩に組まれた腕を振り払い君の隣へ急ぐ。


『なんか食べたいものない?』

そう尋ねると、

「…りんご飴買っちゃった」

と、照れ笑いしながら見せてくる君。
あぁなんて可愛いのだろう。
君といると自然と顔がほころぶ。


『ねえ、2人でまわろうよ』

勇気を出して手を引きみんなとは
別の方向へ歩き出す。

少しびっくりしたような顔をしたけど
大勢とゆうのがすきじゃないのか
特に何も言わずに僕の隣を歩いてくれた。

少し静かな道を歩いていると
境内があったのでそこに腰かける。

「‥今日のジミンくん、いつにも増して
 輝いてるね。浴衣。かっこいい」

りんご飴を食べながらきみがつぶやく。
びっくりして、君の顔を盗み見ると、
暑さのせいか頬を染め、
りんご飴のせいで赤くなった唇。

ああ、なんて綺麗なんだろう。
と思ったときには

『あなたちゃん、好き。』

と口から出ていた。

え?とゆうような君の顔をみて
我にかえった。
でも自分が言ったことは事実だと
火照る身体とは対照的に頭は冷静だった。


『すごく、好き』

と言葉を繋ぐと


少しの沈黙のあと


「わたしも」と微笑んでくれた。


そのとき、花火が打ち上がり
同時に花火へと目を向ける。


君のキラキラした瞳を度々
盗み見ながら
どうやって君からの"好き"の言葉を
聞こうかと考えていると、


ふいに君と目が合った。



「ジミンくん、好き。」



ああ、君には敵わない。





夏の魔法にかけられ。





 


プリ小説オーディオドラマ