第5話

短編集5 th
2,560
2020/01/17 02:31


あなたはいつもみんなの中心にいて
あなたがいればみんなが集まる。
そんな人。



あなたのまわりにはいつも
人が集まっていて
その中心で無邪気に笑っている。


真剣な顔は見惚れるくらい美しく
笑った顔はたちまち可愛い。


『ねえねえ、あなた
 僕って変わり者なのかな』

隣の席のわたしに
話しかけてくるテヒョンくん。

いきなりの相談に
ましてや二言、三言しか
話したことないのに名前を呼ばれて
焦るわたし。


「‥え、なんで?」

そう答えると。

『僕、女の子に好きって言われたら
 好きになるかもと思って付き合うんだけど
 好きになる前にだいたい女の子の方から
 変だ、思ってたのと違う。
 って振られるんだ』


そんな訳ないと思いながらも
テヒョンくんの表情は真剣だから。


「‥よく分かんないけど、
 何をもって、変わり者なのかな?」

ん?といった表情でわたしの話に
耳を傾けるテヒョンくん。

「だって、そういったことも
 全部含めてテヒョンくんな訳で、
 自分が思ってたのと違うから変って
 言ってるってことだよね?」

と答えると少しびっくりしたような顔をして
口を四角にしてニヒヒと笑い

『そっか、僕は僕だよね』

と満足そうな顔をしている。


わたしの言ったことが正解かどうかなんて
分からないけどテヒョンくん的には
満足したようだ。


それからとゆうもの、
ことあるごとに

『あなたー、あなた』

と話しかけてくれるテヒョンくん。

いつもはみんなの中心にいるあなたを
見ているだけだったのに
今では少し近くにいる。

それだけでわたしの日常は
キラキラと輝いていた。



確かにテヒョンくんの言動は
いつも唐突で、予想外の事の方が多いけど
それにはなにかしらの理由があって
それが直接的にじゃなくても
巡り巡って誰かの為になってる。

なんてことも良くあった。


いつの間にかただの憧れから
好きの気持ちに変わっていた。




今、わたしは複数の女の子に
囲まれている。
当然、良いお話しではないだろう。

なんとなく予想はついてた。

"最近、テヒョンに気に入られてるからって
調子乗ってんじゃねーよ"

はい。調子乗ってます。
好きな人と話せるんだから少しくらい
良いじゃないか。

なんて言える訳もなく。
黙ったままいると、

"少しは考えて行動した方が
自分の為だと思うよ〜"

なんてケラケラ笑いながら
去っていった。



それでも、テヒョンくんは
変わらず話しかけてくれるわけで
わたしもいつも通り接する。



もう何度目かのこの光景。
よくもまあ1人の女に
ここまで執着できたものだ。

"あんたさ何回も忠告してんのに
日本語理解できないの?"

また始まった。

"黙ってたらいいと思うなよ"

ドンっと肩を押される。


お生憎様、呼び出しなんて
過去に何度も経験している
それを踏まえて今、大人しく
過ごしているわたしを褒めてほしいくらいだ。


"なんとか言えよ!"

また肩を押された衝撃で
後ろの壁へ背中を打ちつけた。


「っ!はー、よくもまあ1人の女に
 ここまで執着できますね?
 こんなところでわたしに構う暇があるなら
 テヒョンくんのところに行って
 気に入られる努力でもしたらどうですか?
 どうせ上辺でしかテヒョンくんのこと
 見てないくせに、
 集団の中でしか自分を保てないくせに、
 あんたらになんて負ける気がしない」


"っ!調子にのんな"

と女が手を振り上げたとき


『みーちゃった』


と声が聞こえてくる。


反射的に上を見上げると、そこには
窓に頬杖ついてこちらを見ている
テヒョンくんだった。


予想外の人物に女たちは
慌てて走り去っていった。
その後ろ姿にテヒョンくんは
バイバーイなんて言いながら手を振っている。


何も言わず手をこいこいってされ
テヒョンくんがいる場所へと向かう。


『あなたの新しい一面見ちゃった』

ニヒヒと笑う。

「…どこから見てたの?」

と聞くと、割と最初の方からだった。

『あなたが肩押されて
 壁にドンってなったときに
 声かけようとしたんだけど、
 あなたが反論しだしたから
 そっと観察してた。
 あなたかっこいいね〜』


あのときわたしはなんて言ったのだろう
あまり記憶にないが、おそらく
変なことは言ってないだろう。
と考えていると


『あなたはさ、僕のことすき?』


思いもよらない質問に驚いていると


『‥僕はあなたのこと好きみたい。』


少し照れたように笑ったあと、
真剣な顔して

『‥あなたは?』


なんて聞いてくるもんだから
これは確信犯なのだろうか。


「好きに決まってる」


と答えると


ニヒヒと笑う君。





どんなあなたでも嫌いになんてならないから。





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