第34話

短編集34 jk
1,639
2020/02/16 08:53

失恋した。
ずっとすきだった幼なじみに彼女ができた。

女なんか興味ないみたいな感じで
なんなら近くにいる女ってわたしくらいだと思ってた。

大学生になると変わっちゃうんだ。
しかも彼女すごく綺麗な人だった。
わたしなんて所詮ずっと幼なじみの妹だったんだ。



はあー、学校行く気にならない。
昨日泣きすぎたから身体が重たい。
目も心なしか腫れてるかも。

それになんでか知らないけど、
隣の席のチョンがめちゃくちゃ悪態ついてくる。
わたしのこと嫌いなら話しかけなきゃいいのに。


教室の扉を開けるとおのずと出るため息。
自分の席に着くと早速。

『いつにも増してひどい顔だな』

ほらでた。
いつもならうるさいな〜とか適当に返事するけど
今日はそうゆう気分じゃないし
ひどい顔とか知ってるし。

わたしだって美人になりたい
そしたら妹止まりじゃなかったかな。
とか考えてたら涙がじわじわ溜まるのが分かる。
瞬きしたら溢れ落ちそうだから必死に耐える。


『は、お前無視かよ』

ってわたしの顔覗き込んでくる。
見んなよ。でも今は涙を流さないように必死。
そしたら、はあーってため息ついてどっか行った。


その瞬間溢れる涙。
でもそれ以上流れてくることはなくて
とりあえず机に突っ伏した。


しばらくして頭に冷やっとしたのが置かれた。
びっくりして顔をあげると

『やる』

ビニール袋に入った氷水だった。
え、意外に良いとこあるじゃんって素直に受け取り

「ありがと」

ってお礼を言うと

『顔、ひどすぎだから』

ほんと一言余計だけど
なんか嫌な感じじゃなくてこいつの優しさなのかな
って思ったらなんか笑えた。

『は、なに笑ってんの』

「いや、あんたのせいだから、でも元気出たかも」

『‥ふーん……なんかあった』

珍しい。いつもはこんな優しいことなんて
言わないのに。でもまあさすがに気付くか。


「…失恋した」

『‥は?』

「…」

『‥だれ』

「あんたの知らない人」

『ふーん』

って自分から聞いといてそれだけ?
まあ、慰めてほしいなんて思ってないけど。




次の日学校へ行くと

『はよ』

「お、おはよ」

まさか普通に挨拶されるなんて思ってなかったから
びっくりしてなんか変な声なった。

ふっ、て鼻で笑われたけどえ、なにこいつ
こんな優しい顔して笑うっけ?

なんか良いことあったのかな。

『あなた』

「…は?」

いきなり名前呼ばれてびっくりした。
いっつもおい、とかお前とかなのに。

「え、なに」

『今日、一緒帰るぞ』

「は、なんであんたと帰んないといけないの」

『は、いいだろ帰るぞ』

「‥タピオカね」

『分かったから、帰るぞ』

「うん」


なに、これ励ましてくれてんの?
今日朝からなんか優しいし昨日の今日だから?
なんか調子狂うな。



あっとゆうまに放課後。
とりあえず2人で帰ってるけど学校出てから
一言も話してない。

そのままタピオカ屋さん行って約束通り
買ってもらってお店出たら…
こんなときに限って


"あ、あなた"

「‥ユンちゃん」

その隣にはこの間の綺麗な人。
まだ会いたくなかったよ。
タピオカを持ってる手に力が入る。


なんか言わないとって思ってたら
後ろから頭ポンってされる。

『あなた行くぞ』

無理矢理腕掴んで連れてくから

「ユンちゃん、彼女さんと幸せにね
 おめでとう」



って声震えてなかったかな。

「…ちゃんと言えてたかな」

『うん』


良かった。すきな人には幸せでいてほいしもんね
その隣が自分じゃないとしても。


声を殺して泣いた。
その間ずっと無言でただわたしの腕引っ張って
歩いてくれてた。



「ありがとね」

そう呟く。

『俺がいるじゃん』

「うん、そだね。正直あのとき無理矢理
 引っ張ってくれて助かった」

『…お前ばかなの?』


は?って言い返そうとしたらいきなり
立ち止まって気づいたら腕の中にいた。


『…気付け、バーカ』

「……は、気付けってあんたそれ無理でしょ
 ツンデレにも程があるわ」

『…お前にすきなやついるとか知らねえし
 いつの間にか失恋してるし泣いてるし』

「うん」

『お前は笑ってたほうがいい』

「うん」

『…惚れた?』

「ばかなの?早過ぎるわ。でもありがとう
 とりあえず、離してもらっていいかな?」

『やだ。お前が俺のことすきになるまで』

「いや、さすがに無理だからすぐには。」

『…じゃあ名前で呼んでよ俺のこと』

「ジョングク。
 はい呼んだから離して」

『…少しは照れろよ』

「いや、名前ぐらい呼べるから普通に」


なんかいじけてるし。
わたしのことすきならもっと優しくしてよ
小学生かよ。おもしろい。


「ねえ、わたしのどこがすきなの?」

『は、知らねえし。』

「はー?なにそれ」

『もう、はやく行くぞ』


って自然に手握ってきた割には
めっちゃ耳赤くなってるし。



今すぐすきになるなんて到底無理だけど
今笑えてるのはあんたのおかげだね。


プリ小説オーディオドラマ