第36話

短編集36 th
1,606
2020/02/21 10:28


わたしのすきな人には彼女がいる。
諦めなきゃって思うけど心のどこかで
もしかしたらって期待してる自分がいる。

もうすでに1回振られてるのにね。



夏休みに入り今日はテヒョンの家で
DVD鑑賞をするために、
親友のスアとジミンの4人で集まった。


『なに見る?いろいろ借りといたよ』

《わたしはなんでも良いよ》

と言うスアに続けてわたしもと言うと

"じゃあこれにしよ!"

ってニコニコしながらいうジミン。

「なにそれ?」

"こわいやつ"

「無理。ね、スア無理だよね」

"あなたなんでも良いって言ったじゃん"

って言われて言い返せないでいると

"はい決まり!スアちゃんは俺の横来な?"

って自分の横のスペースポンポンして
ニコニコ顔のジミンと
少し照れた顔して素直に横に座るスア。

そうゆうことか。もう黙ってみよう。


そう思いながらDVDをセットしてる
テヒョンの姿を見てると、
振り返ったテヒョンと目が合って
そのままテヒョンが隣にきて腰を下ろした。


体操座りしてる手に胡座かいて座ってる
テヒョンの足くっつく距離だし
必死にドキドキ隠して

「‥なんで隣にくるの」

って部屋が暗いせいか映画館にいるみたいに
小さい声で聞くと

『ん?こわいんでしょ?』

って平気な顔して言ってくる。
彼女いるくせにこんなことするのも悪いと思う。
でも怖いの苦手だから内心すこし安心する。


物語がはじまり、いつ怖いのがでてきても見なくて
良いように顔の近くに手をスタンバイさせる。


はじめの方だからまだ大丈夫かって油断してたら
いきなり画面にワッてこわいの写ってビクッてなる。


ジミンとスアの方見ると、さっき俺の横来な?とか
かっこいいこと言ってたのに
スアと手握って2人でビクビクしてる。

テヒョンの方を盗み見ると真剣な顔して
画面見てる。横顔が綺麗でドキドキする。


とりあえず画面に目を向けて
これから本格的に出てくるであろうこわいやつに
向けて深呼吸をする。

すると横から伸びてきた手が
わたしの手を掴んでギュッと握る。

え?と思って目を向けると
当然とでも言うような顔してこっちを見て
また画面に目を向けた。


だからなんでこんな期待させるようなことするの。
そう思いながら振り解けない自分もいて
必死にDVDに集中しようとした。


それでもやっぱり手にも意識がいって
だんだん汗ばんできた気がする。
なんか恥ずかしくなって、

「ごめん、トイレ行ってくる」

その場から逃げた。

とりあえず一息ついてトイレから出ると
そこにテヒョンがいた。

「あ、ごめん」

そう言って早足でその場からどこうとすると
腕を掴まれて気づいたら壁に押しつけられる
状態になってた。

え、なに?って言おうとした瞬間
唇に柔らかい感触。
びっくりして急いで胸を押す。


「…なんでこんなことするの?
 彼女いるのに、期待させるようなことしないで」

『…』


ひどい、人の気持ちをなんだと思ってるんだ
わたしがすきなの知ってて遊んでるの?


そのあと少しして戻ってきたテヒョンは
また隣に座ったけど
手を握ってくることはなかった。


それからもう1本DVD見たけど
全く頭に入ってこなくて何を見たかも覚えてない。


その日から夏休みの間は1度もテヒョンに
会わなかった。



始業式で久しぶりに会うテヒョン。
あの日から話してないから
どうゆう風に接したら良いか分からなかったけど
案外普通にできた。



『あなた、HR終わったら少し良い?』

「うん?いいよ」


わたしとテヒョン以外誰もいなくなった教室。
テヒョンが口を開く。

『あなたこの間はいきなりごめん』

「…うん、もういいよ」

『友達にしか見れないってあなたから
 告白されたときは答えたけど
 それからどうしてもあなたのこと気になって
 あの日も怖がってるのが可愛くて』

「うん、だからもういいから!」

そんなこと言われたって、
テヒョンには彼女いるしどうしようもない
つい声を荒げて言ってしまった。

『…もう俺のこと嫌い?』

嫌いなわけない。散々期待させられて
嫌いになるどころかどんどん好きになる。
でもテヒョンが好きになってくれなきゃ意味ない。


「…きらい。になれるわけない。
 でも彼女が居るのにもうあんなことしないで」

『別れた。俺、あなたがすきだから』

「え?」

『遅くなってごめん。あなたすき。』


そう言って抱きしめられた瞬間涙が溢れた。



「遅いんだよ。ばか」

『ずっとすきでいてくれてありがとう』


静かに唇が重なった。




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