第8話

短編集8 yg
2,096
2020/01/20 13:07



中学2年生の夏。
わたしは失恋した。


幼なじみで小さい頃から
一緒にいたユンギ。
気付いたときには好きだった。


中学生になると、
まわりの女の子たちが
少しずつユンギの良さに気づき始める。

けど、ユンギが他の女の子と仲良く
喋ってるとこなんてあまり見たことないし
1番近い女の子はわたしなんだって
少しだけ自惚れてた。



「ねえ、ユンギ。」

『なに?』

「‥わたしね、ユンギのことすき」

『え?』

思ってもみなかったという顔だ

『え、なに?本気?』

「嘘でこんなこと言うわけないでしょ」

たちまち困ったような顔になる

『…あー。俺、お前のことそんな風に
 見たことないかも』

「…ははっ、そうだよね。
 そりゃ小さい頃から一緒に居るし
 なんならお風呂だって一緒に入ってたし
 変なこと言ってごめん!
 気にしないで!
 あ!でもこれで気まずくなるとか嫌だから
 今まで通り幼なじみとしてよろしくね
 じゃ、また明日ね」

まくしたてるように早口で
そう告げた後に家の中へ急ぐ。


玄関を閉めたと同時に堪えていた
涙が溢れ出す。


あー馬鹿だ。
言わなきゃ良かった。


その日は1日中泣いた。



次の日の朝

鏡を見ると、泣き腫らした目。
今日は休もうかなって思ったけど
いつも通りよろしくって言った手前
自分が引きずってる姿を見せたらダメだと
最低限の努力をして支度をする。

玄関を出るといつも通りユンギの姿。
わたしの顔を見て少しびっくり
したような顔をしたけど

『はよ。いつにも増してひどい顔』

「っ!誰のせいだと思ってんのよ!
 てか、いつにも増してってどうゆう意味?」


ユンギがいつも通りで良かった。
でもわたしちゃんと笑えてるかな?


それからわたしは
ユンギに女の子として意識してもらえるように
努力をした。

身体にも気を使ったし、パックも
3日に1回は必ずするようにして、
お小遣いを自分磨きに使った。



そして、ユンギにもう一度想いを伝える
ことなく高校生になった。

ユンギとは高校も一緒だった。

ときどき時間が合うと
一緒に登下校した。


ありがたいことに告白されることも
何度かあった
それでもわたしは変わらずユンギがすき。

ユンギも何度か告白されてるみたいだけど
彼女らしき人はいなかった。




高校2年生。


"わー、ソクジン先輩だよ!
 かっこいい!"

'あ、ジミンくんとテヒョンくんだ!
 2人ともかわいい〜'

友達とキャーキャー言いながら
学校のイケメンを観察するのが日課に
なっていた。


「ほんとだ〜、かっこいいし
 かわいいね〜、目の保養だ〜」

なんて言いながら両手を合わせて拝む。


チラッと同じクラスに居る
ユンギの方をみると
イヤホンをつけて机に向かっている。
最近は、作詞作曲?
をしているみたいだ。音楽は良く分からない。


真剣な姿もかっこいいな
なんて思っていると、

[あなたちゃーん]

と、どこからから名前を呼ばれた

"え、ちょっとあなた
 呼ばれてる。ね、ちょっと、呼ばれてる
 ね、あなた。ソクジン先輩"

何故か友達がめちゃくちゃ焦ってる。

'え、なに、あんた
 ソクジン先輩と知り合いなの?'

「え、知り合い?ってゆうか
 こないだたまたま落とし物拾った。
 それがソクジン先輩ので届けた。」

"ちょっとあんた〜言いなさいよー
 とりあえず、手!手!振り返して!"

友達のすごい圧力にとりあえず
手を振ってみる。

「やっぱイケメンだね‥」

独り言のつもりでぼそっと呟くと。
友達がすかさず拾って

"え、え、もしかして〜"
'いいじゃん、
 せっかく顔見知りなれたんだから'

とか勝手に話をすすめている。


まあ、たしかに背も高くて
イケメンだなーって思うけど。
なんて考えながら

また、ユンギの方に目を向けると
今度はバチッと目が合ってしまった。

なんとなく気まずくて
すぐに目を逸らしてしまう。



放課後、帰ろうと席を立つと
目の前にユンギの姿。


『あなた、今からちょっと付き合え』

「…え、いいけど、どっか行くの?」

『いや、今からちょっと作業するから
 そこに座っててくんね?』

「ん?座ってるだけでいいの?」

『うん』

「え、邪魔じゃない?
 いつも1人でイヤホンつけながら
 してるじゃん」

あ、ユンギのこと見てるってバレたかな
なんて心の中で焦っていると


『あなたが居ないとだめ』


そう言うと、黙々と机に向かって
ペンを走らせる。


静かにユンギがペンを走らせる姿を眺める。
さっきの言葉どうゆう意味だろう。


なんて考えながら
ふと中庭に目を向けると、

あ、ソクジン先輩だ。
しばらく見ていると
いきなり意味の分からない動きをしだした。

ソクジン先輩ってイケメンなのに
あんなこともするんだ、

ついおもしろくて
ぷっと声を出して笑ってしまった。

ユンギが顔をあげる。

『あ、ごめん!静かにしてる』

そう言ってまた窓の外に目を向ける。


少しして、ペンの音が聞こえないな
と思ってユンギの方を見ると
完全に手がとまっていた。


「…ごめん。わたしが笑ったから
 集中力切れたよね。」

『…』

返事がない。

作業の邪魔になるからもう
何も言わないでおこう。
そう思ったとき


『…なあ
 お前、あの先輩のこと好きなの?』

「え?あの先輩って、ソクジン先輩?」

『ん』

「え、好きじゃないよ!
 先輩のことそんなに知らないもん
 まあ、かっこいいなあとは思うけど」

『…あ、そう』


そう言って再びペンを握った。


もしかして少し気にしてくれたのかな。
なんて都合の良い考えを頭から排除して
作業が終わるのを待った。


『できた』

いつの間にか寝てしまっていたみたいだ
ユンギの声で目を覚ます


「あ、おつかれ!じゃあ帰ろっか」



『なあ、俺あなたのことすき』

「え?なに?」

『好きだ』


いきなりのことに頭がなかなか
ついていかない。

でも言葉は正直で。


「わたしも好き。ずっとすき」


そう言うと安心したように
フッと笑って


『ほら帰るぞ』

と手を引っ張ってそのまま
ギュッと握ってくれた。

それに応えるようにわたしも
ギュッと握り返した。



「あ、そう言えばさっき
 どんな歌詞書いたの?」

そう聞くと

『は、教えない』

「え、ユンギのけちー
 わたしのおかげで書けたんでしょ?」

なんて少し嫌味っぽく言うと

『…ラブソング』


っとぼそっと呟く。

「え?なに?」

『…教えねーよ』





ユンギ、実はちゃんと聞こえてたよ。
その歌詞にメロディがついたら
1番にわたしに聞かせてね。

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