第21話

短編集21 jn
1,596
2020/02/06 05:16


僕の会社には同僚の女性社員から
小悪魔とか男たらしとか言われてる子がいる。


顔はもちろん可愛いし
仕事はちゃんとこなすけど、
少し抜けてるところもあって
見てるだけでついつい顔が綻んでしまう。


男性社員は必死にアピールしている。
まあ、僕もそのうちの1人なんだけど。


ほかの男と違うかたちでアピールしようと
きっと男慣れしているであろう君と
あえて少しずつ距離を縮めていった。

その甲斐あってか最近は仕事中
ときどき目が合う気がするし
仕事以外の会話もしてくれるようになった。


(『今日の夜2人でご飯行かない?』)

社内メールで誘ってみる。
チラッと君の方をみると
少し照れたようにうんと頷いてくれた。

ああ、可愛すぎる。
あれも計算なのかもしれないけど
もはやそんなことはどうでも良い。


急いで個室がある落ち着いた雰囲気の
お店を予約する。
予定通り仕事を終わらせて会社の下で
君を待つ。


「すいません、お待たせしました」

少し息を切らしながら小走りで
近づいてくる。

『あ、あなたちゃんおつかれさま』

会社からすぐ近くのお店なので
歩いて向かう。

お店に着き個室に通されて
飲み物を聞かれたので

『生ビールで。あなたちゃんは?』

「あ、じゃあわたしも」

てっきり甘いカクテルかなんか頼むと
思っていたから少しびっくり。

飲み物が届き
おつかれといってコツンとグラスを合わせる。


『今日、いきなり誘ったのにありがとう』

と言うと

「いえ、こちらこそ誘って頂いて
 ありがとうございます。
 なんか落ち着いたお店で緊張します。」

『そんな緊張しないでよ、楽しもう』

「…はい。恥ずかしいんですけど
 実はわたし男性の方と2人で食事するの
 初めてなんですよ」

『え?初めて?』

こくんと頷く君。


少し頬が赤くなっている。
嘘を付いているようには見えないけど。
これが小悪魔ってことなのか?


『‥初めてってことはその、
 お付き合いとかしたことないの?』

「…はい。
 わたし中学から大学までずっと
 女子校だったので。
 あまりそんな機会がなく」

『そうなの?こんなに可愛いのに』

と言うと、顔がいっきに赤くなる。
これが演技だとしたら相当なやり手だ。

「いえ、とんでもないです。
 未だに男性とどう接したら良いのか
 あまりよく分からなくて」


もしかしてただ男に慣れてないだけ?
でも思い返せば、男性社員から
話しかけられてることはあっても
仕事以外で話しかけてるところなんて
見たことないかもしれない。


『僕に接してるみたいに
 普通にしたら良いんじゃない?』

ほんとはしてほしくないけど。

「ソクジンさんは他の人とはなんか
 違うから話しやすいんですけど。」

『え、それは良い意味だよね?』

と少し笑いながら言うと

「あ、もちろんですもちろんです。
 他の方たちは距離が近いというか
 なんかあれなんですけど
 ソクジンさんはそんなことなくて…」


って必死に弁解してる。かわいい。
でもこれはつまりチャンス。
あなたちゃんは僕に
心を開いてくれてるってことだよね。


『僕さ、あなたちゃんのこと
 すきなんだよね。
 だから今日誘ったんだ』

「え、はい。わたしもです。
 いつもわたしのこと気にかけてくれて
 仕事もできてかっこよくて尊敬してます。」

『…ん?』

「え?」

『…そん、けい?』

「はい!」

と目を輝かせる君。
どうやら伝わってないみたいだ。


『僕は、あなたちゃんと
 チューとかしたいって意味の
 すき。なんだけど?』


そう言った瞬間また顔がぶわっと
赤くなる。

「ちゅ、ちゅ、チューですか?」

『うん。あなたちゃんは
 僕のこときらい?』

「そんなわけないです!」

『じゃあすき?』

「…でもチューはまだできません」

『っふふ、かわいいね』

「え、もうなんですか。恥ずかしいです」

そう言って顔を両手で隠す。




まだってことはあとどのくらいかな?
小悪魔の正体は恋愛未経験の
普通の女の子って分かったから
これからは攻め方を変えてみよう。
長期戦も覚悟してるよ。






















プリ小説オーディオドラマ