第28話

僕と歌姫 side??
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2018/08/11 11:59
僕が噂を聞いたのは偶然のこと。
監獄の歌姫の話は聞いたことがあったが、
その歌姫が何歳いうのは聞いたことが無い。
都市から離れた壁側に住んでいた僕。
その日、都市中心部に油を売りに来ていた。
都市の人
ねぇ、九ノ瀬さん、聞いた?
監獄の歌姫。もう16歳になった
らしいわよ。
都市の人
え…もうそんなに?
都市の人
私、1回その歌姫を見たことが
あるけど、まぁ可愛らしい子で
そんな悪魔とは思えなかったん
だけどね…
都市の人
まぁ、これも運命だからしょう
がないわ。
都市の人
ほんと、可哀想よねぇ…
??
……。
…歌姫が捕まった?
僕は当時、名無しの歌姫の存在を知って、
一度は見てみたいと思っていた。
いつも通り都市の建物に着くと、僕は軍人に
注文された油を渡しお金を貰った。
軍人
いつもご苦労。
??
はい…
帰り際、軍人達が話しているのが聞こえる。
軍人
そういや、あの子はどうした。
軍人
歌姫のことでしょうか?
軍人
ああ。
軍人
あの少女でしたら…地下の牢屋
にいます。
それを聞いた僕は建物内を歩き、地下への
階段を降りる。
??
……。
ここかな…?
覗くと、奥から金属音が聞こえてくる。
見張りは…誰もいないみたいだ。
近くまで行くと、男達が少女を囲っている。
男達は暴力を降るって、少女は何も言わずに
耐えていた。
あの子が噂の…
途中で少女と目が合う。すると、口パクで…
『今すぐ隠れて。』
そう言われ、慌てて近くの机の下に隠れると
数分で男達が牢屋から出て行った。
誰もいなくなった牢屋。
少女から落ちる血の音だけが響いている。
近くに誰もいないことを確認した僕は牢屋に
近付く。
少女は僕と同じくらいの身長で、長い黒髪に
黒目ととても綺麗で美しい。綺麗なのに、
血で濡れて凄い可哀想に思った。
彼女が噂の監獄の歌姫…?凄い可哀想…
少女
…ありがとう。
??
え?
少女
そんな風に思ってくれる人、
中々いないんだ。
少し悲しそうに笑った少女。
??
考えていることが分かるの?
少女
うん…そのせいで捕まった。
??
そうだったんだ…
少女
もう10年はここにいるかな…
??
10年!?
少女
そう、10年。
??
……外の世界に興味ある?
少女
外の世界?
??
そう!
僕は壁の外の世界を見るのが夢だった。
想像の外の世界のことを少女に話す。


「また明日も来るから。」そう言い、次の日
になるとまたこっそりと牢屋へ。


毎日通う内に僕は彼女が好きになっていた。
話している内に牢屋にいる彼女が可哀想に
なって…
??
…逃げよう。
少女
え?
??
そして、外の世界を見よう。
僕はそう言い、壁にかけてある鍵を取ると、
彼女と枷を取り手を引いた。
そして、考えていた壁の外に行くルート通り
に進み、外の世界へ。
名前の無かった少女に僕は第一印象が綺麗で
美しいと思ったことから、麗美と付けた。
レミ
ありがとう、XX。
??
いやいや。
全てが上手くいく。…そんなわけ無かった。
軍が僕達を囲み、レミを拘束する。
助けようとした僕も軍に捕まり動けない。
そんな時にレミが言った言葉。
それは僕の心に大きく突き刺さった。


レミの体が大きく跳ね、ゆっくりと沈む。
真っ赤に染まっていくレミ。最期までとても
綺麗で美しい…
??
う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!!
絶望した僕は舌を噛み切った。
軍人が何かを言っている。
薄れる意識の中、あることだけを考えた…
お前ら、軍人のせいで…
お前ら、都市の人のせいで…
レミは死んだ。
………絶対に許さない…

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