顔には痣があり、少し髪もボサついてはいる
ジャラジャラと鳴っていたのは手首について
いる枷の鎖がぶつかり合う音のようだ。
懐かしさにまた会えた嬉しさに思わず俺は
琉依を抱き締めた。
他のメンバーがマイクでそう言ってくれ、
観客から拍手が上がり、そして花火が上がる
少し輝いた目で空を指しながら俺に聞く。
琉依は香織の方に走ってステージからいなく
なり、俺達のライブは再開した。
たまに舞台袖が気になるが観客の方を向いて
精一杯歌いきりライブは終了する。
楽屋…
楽屋に戻り、琉依を連れて来たメンバーの
直己に話を聞く。
少し待つと、香織付き添いで琉依が来た。
そう言って、持っていた小さめの鞄から一通の封筒を取り出し、俺に渡してきた。
中身は手紙のようで…
百原隼翔様へ
お久しぶりです、テレビでのご活躍私もよく
拝見させていただきます。琉依様のことなの
ですが、クレア様がレミ様の後継者を探して
いたということでレミ様の頭の良さと優しさ
から最後まで残り、最後は自分から犠牲へと
なることを予想していました。なので、琉依
様は殺されることなく、戻ってきました。
戻ってからは、高校卒業後は大学に通わず、
部屋にい続けました。隼翔様と香織様の元に
着く頃はまだ痣が残っている可能性が高いの
ですが、琉依様をよろしくお願いします。
ジンこと琉依の従兄弟、三鷹幸樹より
ジンが琉依の従兄弟って…まぁ、いいか。
礼を伝えると手紙を鞄にしまった。
手紙を読んでいて気付かなかった、気付くと
俺と琉依以外が全員いない。
これ、絶対にわざとだろ……
そう思いながら琉依を見ると、不思議そうな
顔をして俺のことを見てくる。
言われてみれば、目線の高さが高くなった
ような気もする。
もうここまで来たら……あの時、言おうと
思っていたこと。そして、今思うことを…
いきなり名前を呼ばれ、再び不思議そうに
している琉依の両手を握り、目を見る。
謎の敬語を使いながら俺は言い切った。
すると、彼女は…
赤くなり、笑い泣きながら少し震えた声で、
そう返事をしてくれたのだった…
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。