トレイルレースとは、道路とかでは無く、
山道などを走るレースのこと。
普通の道とは違い、足元が不安定のため、
充分な注意が必要な競技である。
一斉に人が動き出す。私も探していると…
香織が他のメンバーを見つけ、駆け寄る。
みんなも元気そうだが、明らかに私に対する
態度は違う。
他のチームも走り出し、黒チームも走り出す
私は黒チームのあとを黙って追うだけ。
最初の方は緩い坂だが、進むにつれて坂は
急になっていく。
この中で一番、足を引っ張りそうなのは…
走るのが苦手と言った莉世と、既に汗を少し
かいている唯斗。
上位をキープしながら走って行くと、分かれ
道が見えた。立て札があり、内容は…
今と同じくらいの山道が続くのと、少し短く
なるが、山の昇り降りが激しくなる道。
そう言い、進むと立て札通りに昇り降りが
激しくなる。たまにコケたりする人もいた。
私は黙って走り続ける。
ここは凄い、天候がだんだん怪しく…
2時間30分走ったところで雨が降り出した。
順位はスマホで確認出来るようになっていた
現在2時間30分時点で、50位中の4位。
走った距離は短い方を選んだから…30km中の14km。
このペースを保てば、間違いなく上位のまま
ゴールが出来る。
山道は段々とぬかるんでいく。
そして、石を踏み締め走り続ける。
ガタガタの岩をみんなは協力して登る。
私は無言、独りで岩を登りついていく。
スマホを見ると、他のチームがどこを走っているのかが見れた。トップ5は断トツで
かなり後ろに他のチームがいる。
右は急な斜面で落ちたら木々が生い茂る暗い
闇に落ちるだろう。コースに戻るのも難しい
すると……
唯斗が石に躓き、体が右側に放り出される。
嫌だけど…親を馬鹿にされてムカつくけど!
私は信じるって決めたから…!!
私は唯斗の手を引っ張り、道側に引く。
すると、想定外のことに…
…私が代わりに急な斜面の方に放り出された
私の体は斜面を転がり落ちていく。
全身に木が当たり、枝が切り傷を作る。
私は地面から出てる岩にぶつかり止まった。
雨が私の体温を奪っていく。
寒くて暗いなぁ……
私はそうして、静かに瞼を閉じた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!