第6話

黒の時代_伍
1,432
2023/07/23 16:33
あなた(黒の時代)
頬杖をつきながら、私は音のなった方へ目をやる。
太宰 治(黒の時代)
今日も早いね、あなたの下の名前は
あなた(黒の時代)
…太宰
見慣れた顔に、私は目を下にやってレモンジュースを揺らす。
大人ぶれるんだ、これを飲んでると。
太宰 治(黒の時代)
いやぁ…遅れた遅れた…
太宰 治(黒の時代)
…で、何を考えていたんだ
あなた(黒の時代)
…早く二人来ないかな、
太宰 治(黒の時代)
今日は二人とも来ないよ。
今日も織田や安吾が来ると聞いて、私はここに足を運んだ。
独りならば絶対に来ない、この様な処へ。態々足を運んでやったというのに。
あなた(黒の時代)
…太宰…何で騙した?
太宰 治(黒の時代)
嫌だな、そんな目向けないでよ。…近頃らあなたの下の名前悩んでそうだったから
太宰 治(黒の時代)
…僕の考え、当たってたみたいだね?
あなた(黒の時代)
…はぁ…
あなた(黒の時代)
太宰には隠し事は出来ないか…
人の観察が得意な此奴太宰に、嘘はつけない。改めて思い知らされた。
あなた(黒の時代)
…って、思ってる訳。…ははっ、可笑しいよね、分かってんのよ?私も。
太宰 治(黒の時代)
…悩みの種はそれかい
あなた(黒の時代)
…嗚呼、そうさ
くるくると硝子のコップを回すしか、私は出来ない。
太宰 治(黒の時代)
…だからなの?
あなた(黒の時代)
何が。
太宰 治(黒の時代)
ほら、気づいていないの。眼の下だよ
あなた(黒の時代)
目の下…?
太宰 治(黒の時代)
赤くなってる
あなた(黒の時代)
ッ、……
太宰 治(黒の時代)
綺麗な蒼い瞳が台無しだよ。
…此奴、無自覚かどうかは知らないが偶にキメるな。…うざったらしい。
あなた(黒の時代)
…そうかい。
あなた(黒の時代)
やっぱりバレるもんか…
あなた(黒の時代)
ってか…私泣いてた…んだね、
太宰 治(黒の時代)
…僕は知らないけど…赤くなってるからには泣いてたんじゃないの?
あなた(黒の時代)
あはは、正論だな
そうして私達は共に愚痴を言い合い、
家に帰った訳だ。
…そして、
翌日四人で集まった時、太宰が
「  思い出作りだよ。  」
と、
写真を撮った。
そして四人で集まるのは
それが…
” 最 後 ” だった。
其れは何故か。
四人の内一人が…
死んだからだ。
もう数日も陽の光を浴びていない男の部屋を、私はノックする。
あなた(黒の時代)
…太宰
太宰 治(黒の時代)
…あなたの下の名前か
意外にも返事は帰ってきて、私は驚いた。
あなた(黒の時代)
…ここ、開けてもらえる?
太宰 治(黒の時代)
…鍵、開いてるよ
…鍵も開いていた。何だ此奴は。
私は近くにある椅子を引っ張り出し、座る。
あなた(黒の時代)
さて…太宰、織田が死んで直ぐで申し訳ないのだが、
太宰 治(黒の時代)
…織田作の遺言ならこうだよ。
私が聞く前に、もう分かっていたらしい。
…流石だな。
あなた(黒の時代)
…そんな事、言ったんだね
太宰 治(黒の時代)
…あなたの下の名前さぁ、
あなた(黒の時代)
うん。
太宰 治(黒の時代)
ポートマフィアここ、抜けたいって言ってたよね
あなた(黒の時代)
嗚呼…言ったね
確かに。私はもうこの仕事に限界を感じてきている。
なんとも仕事量が凄い。一日に何回尋問してるのか、指じゃあ数え切れない。
…まぁ、それだけでは無いけれど。
太宰 治(黒の時代)
織田作の遺言を守る為に…人を救う仕事しようかなって、
太宰 治(黒の時代)
で、一人で抜けるのもなんだからあなたの下の名前と一緒に抜けようかな〜、何て、
太宰 治(黒の時代)
…でも、あなたの下の名前が嫌って言うなら…
…なにそれ、
あなた(黒の時代)
良いじゃん
太宰 治(黒の時代)
え?
あなた(黒の時代)
え、めっちゃいいじゃんそれ
太宰 治(黒の時代)
…あなたの下の名前?
あなた(黒の時代)
んー…なら…何処入る?
太宰 治(黒の時代)
…僕と来て…嫌じゃないの?
普段大人ぶってる太宰が、子供らしい顔をしだして、私は思わず笑みが零れる。
あなた(黒の時代)
何、その顔。めっずらしい。…っふ、ふふ、あははっ…!
太宰 治(黒の時代)
ど…どうしたの、
あなた(黒の時代)
っはー…いや…可笑しいな…
あなた(黒の時代)
話戻すけれど…嫌なんて思う訳無いさ。太宰と何年居ると思ってんの
あなた(黒の時代)
…私は、太宰に着いていく。
太宰 治(黒の時代)
ッ…
太宰 治(黒の時代)
…そっか…嬉しいなぁ、
太宰 治(黒の時代)
有難うね、あなたの下の名前
あなた(黒の時代)
…いえいえ。
太宰 治
…あなたの下の名前?
あなた
んぁ、
太宰 治
どうしたんだい
あなた
…いや?昔の事思い出してただけだよ
太宰 治
そう
太宰 治
…本当に…
あなた
ん?
太宰 治
本当に芥川君に何も言われていないだろうね
深刻そうな顔をする此奴に、またも嘘がバレるやもしれない。
そんな気持ちが頭を過った。
あなた
…あったりまえでしょ。
太宰 治
…何か言われたでしょ
あなた
だから言われてないってば、
太宰 治
その癖
あなた
え?
太宰 治
昔からそうなんだ、あなたの下の名前は
太宰 治
嘘をつく時人差し指を親指で触る
…そんな癖あったんだ。やっぱり、人間観察得意だよなァ、此奴ってば、
あなた
…私の事、よく見てくれてるんだ
あなた
…確かに、芥川君に言われた。
あなた
” ポートマフィアに戻って来ないか ” …って
太宰 治
…行かないよね
あなた
何 当たり前の事を…
あなた
考える余地も無く断る
あなた
今回はちょっと泳がしてるだけ
太宰 治
…なら良いんだけど…
…戻る訳ない
だって…
織田と、太宰との約束だもの。
[続]

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