十数人の隊士から次々と繰り出される技
水が、雷が、炎が、風が、岩が、
その他たくさんのものが
鬼の周りを舞う
肉を断つ感触
辺りを染める赤黒い血の匂い
いつまで経っても慣れない
だが、立ち止まるわけにはいかない
レイナに、伸びた鬼の腕が迫る
あなたの場所からでは明らかに間に合わない
鬼の爪が肉を裂き、鮮血が降る
レイラを庇った少年の血が、彼女の頭を赤く染めた
少年がその場に崩れ落ちる
既に、あなたの耳にさえ
心臓の鼓動は聞こえなくなっていた
レイナは少し遅れて、状況を把握する
その場に座ってしまいそうなレイナにあなたが叫んだ
地面にまたひとつ穴が開く
またひとつ、鼓動が消えていく
次々と繰り出される技に、ついに鬼に隙が出来た
ドォォォン!
光に遅れて音が鳴り響く
あなたの刀が、鬼の首を撫でていった
一拍遅れて響く歓声
レイナとあなただけが、
地面を見つめて立ち竦んでいた
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。