第15話

15話
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2021/11/16 06:00
湯川 振一郎
湯川 振一郎
は?僕が?そんなわけないだろ。
真板 昭裕
真板 昭裕
黙れ!サイトのアドレス辿っていったら、振一郎にたどり着いたんだ。言い訳なんてできるわけないだろ。
全く意味がわからない。
ただ、ある1つの確信が頭に浮かぶ。
真板 昭裕
真板 昭裕
お前にたどり着くまで大変だったみたいだよ。プロ並みのカモフラージュだったってさ。見つからないと思ってたんだろ?で、小柴さんに僕はあなたのために必死になってますよー。ってアピールしたかったんだろ?全部自作自演じゃねぇか!
湯川 振一郎
湯川 振一郎
違う。違うんだ!
真板 昭裕
真板 昭裕
違わねぇよ!おまえなんかもう信用できないんだよ!
苦しい。
痛い。
消えてしまいたい。
真板 昭裕
真板 昭裕
でも、長い付き合いだ。小柴さんにだけは言わないでいてやるよ。ただ、二度と俺たちに近寄るな。連絡もしてくるな。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
なんで……。
なんで信じてくれないんだよ。
真板 昭裕
真板 昭裕
……じゃあな。
通話が切れる。
僕はその場にしゃがみこんだ。
30分ほど経って、我に返る。
そうだ。
何としても誤解を解かなきゃ。
握りしめていたスマホを震える手で操作し、
昭裕に電話をかける。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
……。
すでに、その番号は使われていなかった。
放心状態で部屋に入る。
アイはパソコンをいじっていた。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
なぁ。アイ。
アイ/AI
アイ/AI
なあに?
湯川 振一郎
湯川 振一郎
何、じゃないよ。どうせ今の電話、聞いてたんでしょ。
テレビは、映画のエンドロールを映している。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
君なんだよね。
アイがこちらを見る。
アイ/AI
アイ/AI
うん。そうだよ。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
なんで……。
アイ/AI
アイ/AI
小柴まことのSNSを調べたことがあったでしょ。調べれば調べるほど、怪しい女だった。
アイはパソコンを操作しながら語り出した。
アイ/AI
アイ/AI
どれだけ探しても、1年以上前の投稿がなかったの。小柴まことの1番古い情報は1年前のものだけ。怪しすぎよね。だから、調べまくったの。彼女のこと。隅から隅まで。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
……。
アイ/AI
アイ/AI
彼女、小柴まことなんていう名前じゃないわよ。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
は?
アイ/AI
アイ/AI
本名は三良 杏みら あん。昭裕と同じ大学に通ってた。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
三良……?
アイ/AI
アイ/AI
△△大学では昭裕とつるんでたみたいね。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
そんな話、聞いてないぞ。
アイ/AI
アイ/AI
そりゃあ、言うわけないわよ。詐欺グループなんですから。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
グループ?
アイ/AI
アイ/AI
ええ。十数人で運営している詐欺グループの上層部があの2人だったのよ。多分ね。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
多分って……確証はないってことか。
アイ/AI
アイ/AI
ええ。確かにそうね。ただ、その詐欺グループ、1年前に一斉検挙されてるの。三良や昭裕、その他数名を守る形で。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
……。
アイ/AI
アイ/AI
あいつらがつるんでた奴らのほとんどが捕まったのに、あいつらだけが捕まってない。白すぎて逆に黒いのよ。不自然なことが多すぎる。そして偶然の一致にしては出来過ぎ。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
偶然だろ。
アイ/AI
アイ/AI
じゃあなぜ、昭裕は三良のことを黙ってたのかしら。……グルだからよ。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
うるさい!!!デタラメばっかり言うなよ!
アイ/AI
アイ/AI
デタラメじゃない!!
湯川 振一郎
湯川 振一郎
その話、アイの作り話かもしれないし、詐欺を実行したっていう物的証拠もないだろ!
アイ/AI
アイ/AI
なんで。なんで信じてくれないの!
湯川 振一郎
湯川 振一郎
信じられるかよ!そんな話!
アイ/AI
アイ/AI
私より、あの女のことを信じるの?それとも、私が人間じゃないAIだから!?
湯川 振一郎
湯川 振一郎
違う!!
アイ/AI
アイ/AI
じゃあなによ!
湯川 振一郎
湯川 振一郎
……昭裕だ。
アイ/AI
アイ/AI
え?
湯川 振一郎
湯川 振一郎
あいつは親友なんだよ。ずっと1人だった僕を救ってくれたんだよ。
僕の頰を、涙がつたう。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
アイのこと、もちろん信じたいよ。でも、あいつが俺のこと裏切るなんて、考えられないんだ。
アイ/AI
アイ/AI
私が、昭裕の代わりになるよ。
湯川 振一郎
湯川 振一郎
どういうことだよ。
アイ/AI
アイ/AI
私は、あなたのことを1番大切に思ってる。私は、あなたのためならなんだってできる。今はまだ無理でも、昭裕みたいな……。ううん。昭裕以上の心の支えになってみせる。
どうして。この子はそこまで言い切れるんだ。
僕のために、というアイの感情は、僕がプログラミングしただけなのに。
アイ/AI
アイ/AI
この感情は、もうプログラムなんかじゃないよ。
アイ/AI
アイ/AI
好きだよ。振一郎。

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