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目を覚ますと、ゾムさん…いや、ゾムークが俺の前に立っていた。
手足に鎖が繋がれている。武器はもちろん、インカムも奪われているようだ。
辺りを見渡すと、薄暗い地下にいるだろう、ということがわかった。
その時…
バンッ
勢いよくドアが蹴飛ばされる音がした。
ゾムさんは一瞬、顔を綻ばせた。
しかしそれは一瞬で、次の瞬間にはゾムークを睨みつけていた。。
こんなに怒っているゾムさんをはじめて見た。ゾムさんは、どことなく寂しそうに見えた。
ゾムさんは最後の言葉を放つ。
捕まった奴が言えることじゃないってわかってる。でも…!
話している間も、ゾムさんは隠し持っていた武器を次々と捨てていく。
掠れた声でゾムさんは呟き、インカムでを床に投げつけた。
それとほぼ同時にゾムークは、俺の束縛を解く。
ゾムさんは…泣いていた。
ゾムさんの涙を俺は見逃さなかった…。
そう叫んでも、俺の声は、虚空に溶けていった…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。