第4話

第三話
10
2026/03/05 12:00 更新
湊side
前の僕・ ・ ・ のこと…教えてくれない?
あなた
返ってきたのは、あなたの寝息だけ。

いつもこの質問をすると、曖昧に答えられる。
湊side 幼少期

小学2年生


僕が目を覚ますと、そこは病院だった。
体に痛いところはなかった。
でも、僕のそれまでの記憶はなくなっていた。
なにも思い出せなかった。
周りの人たちに言われたのは、
「車にはねられそうになった僕をあなたが庇った」
「僕は事故のショックで記憶喪失になった」
ということだけ。

それ以上のことを聞いても、濁されてしまった。

少しして、怪我が治ったらしいあなたが、病室に来た。

あなた
君の幼馴染のあなただよ。
これから、よろしくね
あ…
一目惚れ、だった。
記憶を失って、不安だった僕に、優しく話しかけてくれた存在。
君は、大丈夫なの…?
僕を庇って…
あなた
大丈夫だよ。軽い接触?らしくて、全然怪我してない!
花が咲いたような笑顔。周りの空気が明るくなった気がした。
…あのさ。
前の僕ってどんな人だったの?
あなた
あなた
優しくて、クラスメイトと仲の良い人だったよ。
そう言って笑ったあなたの顔は、どこか悲しそうで。
そうなんだ…
その日は、一日中雑談した。
どれも他愛のない会話で、僕のことについてはそれ以上聞かなかった。
5年生になって、あなたの家庭が荒れてきた。
だから、うちで引き取ることになった。
その頃には、僕とあなたは親友で、よく一緒に遊んでいた。

学校でも、家でも、明るい顔をしていたけど
ほんとは辛かったんだと思う。
よく体調を崩して、寝込むことが多かった。

6年生に学年が上がる頃、あなたの体調も回復して、またいつもの日々に戻った。
ただ、変わったこととすれば、あなたと僕の距離が縮まったことくらい。
あなたの異能の反動が大きいから、よく一緒に出かけるようになった。


何度も、あなたに記憶を失う前の僕のことを聞いたけど、いつも笑って誤魔化された。

いつしか、僕はこの質問をしなくなった。
それでも、いまだに不安だった。
前までの自分はどうだったのか。
もしも、今の自分より前までの自分の方が良かったって、失望されたら。

あなたに、今の自分を嫌われることが怖かった。

ねぇ、あなた。
僕の過去は、視れないの?
あなた
視ないよ。
…約束したんだ。湊の過去は視ないって。
前の僕と?
あなた
うん。
そう言って、微笑んだあなた。

僕は、前の僕の約束のせいで、前の僕を知れない。
いつか…思い出せるかな
夜風が、冷たかった。
あなたと触れてる背中だけが、あたたかかった。
どうでしたか…?
読みにくくないか心配です…

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