皆一度は気にするであろう自分の容姿。
例えば、スキンケア。
周りの子が化粧水を付けているのが羨ましくて、親にねだって初めて買ってもらった小学生の高学年の頃。
それから、周りの子と比べて乳液やパックとかも買っちゃったり。
周りの子が"可愛い"、"羨ましい"と思ったその瞬間、自分の容姿を気にするようになる人もいるだろう。
きっかけは些細なことだ。
しかしそれは案外、その人にとって深い傷になっていることもあるのだ。
思春期に入って肌が荒れてしまった自分の顔。周りの子の綺麗な肌と比べてショックを受ける。
__しかし、そこで諦めないのが女の子。
病院に行って薬を貰い、スキンケアを丁寧にすることを心掛けるのだ。
毎日薬を飲んで、食事だって気にかける。
1週間や2週間で治るものでは無い。
治るまでに、何ヶ月もかかる、長い長い治療を、めげずに続けるのだ。
中々治らない肌荒れに、悲しむこともあるし、綺麗な肌の女の子を見て自分の肌にショック受けることだってあるだろう。
しかし、それでも諦めない。
それは女の子の強さと言えるだろう。
__否、諦めないという言葉だけでは、その子の努力を語ることはできない。
ただ言えるのは、その子にとって、その努力が"習慣"になったと言うこと。
その子にとって、肌荒れ治療の辛い毎日が、習慣になった頃には…
__きっと、綺麗な女性になっているだろう。
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▽▽
__なんて、心の中で語っては見たものの、そんな努力をしていない美少年が1人、私の目の前にいる。
透き通るように綺麗な肌をしている季星君。
じっと見つめたまま、質問する。
私なんて、化粧水は自分にあった物を徹底的に調べて買っているし、毎日のスキンケアも丁寧にすることを心がけているけれど、食生活が少しでも乱れればあっという間に肌は荒地と化す。
肌荒れ、なんて言葉とは無縁な彼が羨ましい。
化粧水を付けるだけで、この美肌は保たれているのか。
驚きのあまり大きな声で叫んでしまったが、朝早くから来ている2人だけの教室。
周りの目を気にしなくても良い。
しかしながら、美少年というのは特殊な機能でも兼ね備えているのだろうか。
(羨ましすぎる…!!)
自分の今までの努力が馬鹿馬鹿しくなるくらいだ。
はぁ、とため息をつくと、立ち上がってこちらにやってくる季星君。
そのまま私の頰にそっと手を添えてきた。
何故そんな、甘いセリフをさらっと言えるのだろうか。
バクバクと心臓が鳴り出し、聞こえるんじゃあないかと不安になる。
(…でも、綺麗って言われるって、嬉しいな…)
普通なら、嫌味にしか聞こえない言葉かもしれないけど、季星君は真剣な目をしていた。
本心からの言葉なのだろう。
(スキンケア、頑張ってきて良かった)
これからも、綺麗って言われるように努力しようと思わせてくれる季星君の言葉。
人は些細な言葉で傷つくこともあるが、時として些細な言葉に助けられる、と言うことも忘れてはいけない__
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!