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第21話

第三章 もう一人の、彼-10
1,357
2018/11/21 04:37
暮れなずむ空気の中、彼の優しい笑顔だけがくっきりと浮かんで見えるようだった。
好きだって単語を耳にして、ドキッと心臓が大きく跳ね上がる。
彼がホントに幽霊なのだとしたら……幽霊は怖いものっていう概念を覆さなくちゃいけないのかもしれない。
だって……こんなに爽やかに笑って、キュンとさせてくれる幽霊なんて、ホントに存在するの?
?
きっと僕は死ぬ前、君に片想いしてたんだろうね
ドギマギしている私に気付かない様子で、彼は膝を抱えるようにして金網に背中を預けた。
そうしてふっと何処か遠くを見るように、目を細める。
?
好きだったけど君に想いを伝えられなくて、そのまま何らかの形で死んでしまって……。多分それが心残りで……
長谷部鈴
長谷部鈴
…………
?
だから君に告白すれば、思い残すこともなくなってきっと成仏出来るんじゃないかって……そう思ってたんだけど。でもどうやら君に告白して想いを伝えることが最終目標って訳ではないみたいだね
吐息交じりの彼の言葉を聞いて、私はハッと顔を上げた。
長谷部鈴
長谷部鈴
じ、じゃあ、あの日私に告白してくれたのって……
?
うん、僕だよ
ケロッと、彼は肯定した。
?
僕はどうやら数時間しか彼の体を借りて外に出られないみたいで。あの日はただもう、後先も考えずに君に告白することしか頭になかった
長谷部鈴
長谷部鈴
…………
?
君の混乱とか……彼の不安とか、告白した後のこととか。……そんなことまで気が回らなかったんだ。───ごめんね
次から次に色んな事実が発覚して、完全にキャパオーバーだった私は、ただただ呆然と彼の顔に見入るしかなかった。
でももし、彼の言うことが本当なのだとしたら……。
折坂くんの態度も、納得できる。
告白なんかした覚えもないのに、ろくに話したこともないクラスメートから告白の返事をしたいなんていきなり言われたら。
気持ち悪いし、怖いって思うよね。
冷たいように感じたあの時の態度も、それを考えたらしょうがないのかもしれない……。
そこまで考えて、私はふと首を捻った。
長谷部鈴
長谷部鈴
でも……なんで、折坂くんなの?
誰かに乗り移って、心残りだったことをやり遂げたいっていうのは……まだ何となく理解できるとして。
でもそれがなんで、他の誰でもない折坂くんでなければならなかったんだろう……。

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