ガラッ…と勢いよく後ろのドアが開く音が聞こえて、集中していた私はビクッと大きく体を揺らせた。
弾かれたようにドアのほうを振り返る。
そこに立っていたのは折坂くんで。
驚いた私は、思わず椅子を蹴ってガタッと立ち上がってしまった。
射し込む夕陽に照らされた折坂くんが、私を見て目を細める。
逆光で一瞬誰だかわからなかったみたいだけど、しばらくして私だと気付いたのか折坂くんは緩く目を見張った。
大人しかった私の心臓が、折坂くんの顔を見た瞬間一気にバクバクと暴れ始める。
そんな風に、一人でうろたえていた私だったけど。
折坂くんはフイと私から目を逸らし、スタスタと自分の席へと歩いて行ってしまった。
てっきり私の所へ来ると思っていたので、予想外の彼の行動に一瞬ポカンとなる。
黙って折坂くんを見つめていると、彼は自分の机の中を物色し始め、ノートらしきものを取り出した。
そうしてそれをカバンにごそごそしまうと、なんとそのまま私のほうを見向きもせずに一直線にまたドアの方へと歩き出した。
さすがに私も、今日一日の折坂くんの行動に激しく混乱する。
これってもう……照れてるとかいう次元じゃないよね?
はっきり言って、無視だよね?
いや、無視って言うか、無関心……?
とっさに大声で呼び止めると。
教室を出て行きかけていた折坂くんはピタッと足を止めた。
ドアに手をかけたまま、ゆっくりとこちらに顔だけを向ける。
少し長めの前髪の隙間から覗く意思の強そうな瞳に、私の顔が映り込んでいた。
その顔は少しびっくりしたみたいな表情だったけど……。
いやいや、こっちの方がびっくりしてますから。
百歩譲って、クラスの皆がいる前ならその素っ気ない態度も分からなくないよ?
照れてるんだろうな、ばれたくないんだろうなって、理解もするけど……。
告白した昨日の今日で、返事は早めにって急かしておきながら、会釈もせずに無言で立ち去るって。
……その態度はさすがになくない?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。