第7話

第一章 告白-5
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2018/10/31 09:30
折坂くんの席は、廊下側の前から二番目。
ほぼ対角線上に位置する彼の姿は、意外と私の席からよく見える。
今まで意識したことなかったからこんな風にマジマジと見つめたことなかったけど……。
折坂くんて、結構線が細いんだな。
今ってちょうど衣替えの移行期間なんだけど、折坂くんはまだ半袖で、袖口から伸びる腕がすごく細い。
部活、やってないのかな?
運動部って感じじゃないよね。
長谷部鈴
長谷部鈴
(……って、これじゃなんか、私のほうが折坂くんのこと好きみたいじゃない!)
知らず知らず頰に熱を感じ、私はパタパタと手の平で顔を扇いだ。

──経験がないって、怖い。

今まで全く意識してなかったのに、告白された途端に気になっちゃうなんて……。
私ってこんなに、単純だったっけ?
長谷部鈴
長谷部鈴
(返事……どうしよう)
折坂くんから窓の外に目を移し、頰杖をついたままそっと溜息をつく。
視界に映るのは、校庭を挟んで向かいに立つ芸術コースの校舎。
細く開けた窓から、秋風と共に色んな楽器の音が微かに滑り込んできた。
噓をついちゃいけない。
それだけは昨日のうちに決意していて。
……でもじゃあ私の気持ちは? って自問自答してみると、出てくる答えはやっぱり『友達から始めたい』なんだよね。
さすがにいきなり付き合うって決断はできないし、かと言って折坂くんのこと何も知らないまま断ってしまうのもなんだか悪い気がして……。
もっと彼のことを深く知れば、好きになるかもしれない訳だし。

──ただその場合、好きになれない可能性もあるわけで……。

もし好きになれなかった時は、期待させてしまった分余計に傷付けちゃうことになるよね……。
長谷部鈴
長谷部鈴
(あーもー……告白されるってこんなに大変だったんだ)
結局昨日からこんな感じで、一つの答えに辿り着いては一つの問題が発生して……を繰り返して、その度に頭を抱えてる気がする。
漫画見て、こんな告白されてみたいなーなんて単純に思ってたけど。
告白されたらされたでこんなに頭悩ませるなんて、知らなかったよ……。

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