第20話

第三章 もう一人の、彼-9
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2018/11/21 04:37
少しずつ陽が沈んでいき、彼の顔も徐々に闇の中に溶け込んでいく。
そんな中、私の口の中はカラカラに渇いてしまっていた。
確かに、今目の前にいるこの人は、折坂くんとは別人だ。

──そう思うのに。

やっぱりまだ、私は半信半疑だった。
だって……だってこんなこと、すぐには信じられない。
折坂くんは私をからかってるんじゃないか…って。
そんな思いがどうしても拭い去れなかった。
?
信じられない?
黙り込んでしまった私の顔を覗き込むようにして、彼はそう聞いてきた。
急に彼の顔が近付いてきて、私は慌てて上半身を後ろにのけ反らせる。
膝に力が入らなくなってそのままペタンとその場に腰を下ろすと、それに倣うように彼も私の向かいに腰を下ろした。
長谷部鈴
長谷部鈴
し、信じられないっていうか……。訳が、わからなくて……
?
まあ、そうだよね
長谷部鈴
長谷部鈴
気が付いたら折坂くんに、乗り移ってたってこと?
?
うん
長谷部鈴
長谷部鈴
じ、じゃあ、あなたは……ゆ、幽霊ってことに……なるの?
恐々尋ねると、彼は少し間を空けてから「んー…」と言って困ったように空を仰いだ。
?
……多分、そうなんだろうね
そう呟いた彼の声は、どこか少し寂しそうだった。
まぁ、確かに……。
自分が何者かわからないけど、幽霊だってことはほぼ間違いなくて。
それってつまり、もうこの世にはいない……って、ことだもんね。
長谷部鈴
長谷部鈴
…………
何を言っていいかわからなくなり、何となく目線を下げて俯くと。
彼はすぐに気を取り直したように、こちらに向き直った。
?
でもね、一つだけ覚えてたことがあるんだ
長谷部鈴
長谷部鈴
え?
?
君のこと
柔らかく彼が微笑み、真っ直ぐに私を見つめる。
あまりにも真っ直ぐに見つめられて、私は金縛りにあったみたいに動けなくなってしまった。
?
長谷部鈴っていう女の子を、好きだっていう気持ち
長谷部鈴
長谷部鈴
…………
?
そのことだけは、覚えてたよ

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