自宅に帰ってからお風呂に直行した私は、湯船に浸かりながらぼんやりと今日のことを思い返していた。
折坂 孝平。
2年に進級してから同じクラスになった、男子。
目立つタイプではないけど、暗いって訳でもなくて……なんていうか、ホントに普通の男の子っていう印象しかなかった。
いっつも男子同士でつるんでて、女子と話してるところなんてほとんど見たことなかったし。
ぶっちゃけ、席も離れていて、言葉を交わしたことがあったかなかったかすら思い出せないほど、彼とは接点がなくて。
……だから今日の告白は、ホントにホントに心底びっくりした。
折坂くんは一体、こんな私のどこを好きになってくれたんだろう……。
ブスとまでは思わないけど、ほとんど話したこともないのに好きになってもらえるほど可愛いとも思わないし。
まさかホントに告白されるなんて思ってもみなかったから、あの瞬間私の頭の中は真っ白になってしまって。
結局返事も保留にしてもらって、逃げるように帰ってきちゃったんだけど……。
ちゃぷん、と鼻まで顔を湯船に沈める。
返事って言ったって……OKなら付き合うってことだよね。
折坂くんと付き合う。
────はっきり言って、想像もできない。
どんな人なのか全然知らないし、話が合うのかどうかも分からない。
他に好きな人がいるって訳でもないけど……。
好きじゃないのに付き合うってのも、抵抗あるし。
折坂くんにも失礼だよね。
本音を言うと、もう少し時間をかけて折坂くんのことを知りたい気持ちがあった。
そして、どうして私のことを好きになってくれたのか、何かきっかけがあったのか、なんて、せっかくなら聞いてみたい。
色々彼と……話をしてみたい。
いつもより長めにお湯に浸かって考え事をしていたせいか、クラッと眩暈に襲われて。
軽く首を振ってから、私はザバッとお湯を蹴るようにして立ち上がった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。