第23話

23.私は変な人なんだ
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2022/10/22 02:30
牛沢
なああなた


レトさんが見えなくなってからしばらくして、うっしーが口を開いた
あなた
何?
牛沢
キヨと…いや、キヨどうだ?
あなた
え?どうだ、って?
牛沢
あーえっとな…家でのキヨどんな感じだ?
あなた
家でのキヨ?う〜ん…優しいよ。動画と違って結構無口だけど、話しかけたらちゃんと話してくれるし、一緒にゲームとかしてくれるしね
牛沢
えっと…まあそうだな。そうじゃなくってさ、お前から見てアイツはどんな奴だと思う?
あなた
えっ…?


咄嗟に言葉が出てこなかった
どんな奴か?キヨ…キヨは…








あなた
変な人、かな
牛沢
変な人?当たり前だろ
あなた
あ、いやそうじゃなくてさ


うっしーは不思議そうな顔をして首を傾げた
あなた
変な人ってのはさ、私みたいな人間によくしてくれるってこと
牛沢
よく?
あなた
うん。…記憶もない。お金も持っている訳でもない。そんな怪しい人間を助けてくれて、住まわせてくれた変な人


後ろで握った手に爪が食い込む
あなた
キヨがいなかったらさ、私死んでたかもね


そう言って笑った
牛沢
………


何故かうっしーは苦い顔で拳を握った

上手く笑えてなかったかな
あなた
だからさ、感謝してるんだ。キヨには。もちろんキヨが私に会わせてくれた人達にも


オレンジ色の光が消えた空には控えめに星が瞬いていた
あなた
こんなに幸せなのって初めてなんじゃないかって…そう思うんだ
牛沢
あなた…?
あなた
…記憶なんて戻らなければいいのに
牛沢
ッ…あなた、俺は…
あなた
うっしーありがとう。楽しさを教えてくれて
牛沢
チッ…冗談はほどほどにしろ
あなた
……家もうすぐだから、ここでいいよ。ありがとう。バイバイ


そう言ってまた笑う



今度は上手く笑えたかな?
牛沢
…おう。気をつけろよ


なんとも言えないような表情をしたうっしーの顔を見ないように足早に立ち去る
あなた
こんなこと言いたかったんじゃないのにな


紙袋を大事に抱えて小走りで家に向かう

早くしないとキヨに怒られる
あなた
ッ!…あっご、ごめんなさい!
いえ…え?あなたちゃん!?
あなた
え?


大事に抱えた紙袋をしわくちゃになるほど握りしめた
















なんて最悪なプレゼントなんでしょう

悪夢とともに私は再び目覚めた
あなた
もうあれから1年くらいか


今度こそ眠るために重い体をもう一度横に倒した

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