目の前にヒラの顔があった
慌てて見渡すと車はすでに止まっていた
ヒラがドアを開けて私を起こしたことからも、止まっていることは分かっていたはずだ
しかし、私は寝起きで思考が追いついていなかった
フジの言葉にハッとする
三人の言葉に恥ずかしくなって俯いた
言い切る前にキヨが乱雑にコートを取り上げる
キヨに差し伸べられた手を取って外に出た
こちらを振り返りもしないキヨの服の裾を握る
返事は返ってこなかった
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ヒラとフジも私たちの前を歩いている
それ以前にここはキヨの住んでいるマンションではない
二人が家まで来るという訳ではなさそうだ
ここはどこだろう?
マンションということしか分からない
そう言いながらヒラはエレベーターのボタンを押した
しばらくして止まった階に降りる
フジが一つの扉の前で止まった
フジが鍵を開けて扉を開けた
マンションの一室に入る
ごく普通の部屋に見える
見覚えがある気がする
二人の声とは別に部屋の奥からも声が聞こえてきていた
物音がしたと思ったら一人の男が目の前にいた
後ろでごにょごにょ言ってるキヨの言葉は無視する
画面の向こうの光景が再現されたような感覚に心が踊る
こーすけは苦笑した
興奮して話しているとフジが扉から顔を覗かせた
ヒラに促されるまま扉を通った
パンッパンッ…パンッ
突然乾いた音が響いた
テープのようなものが飛んでくる
それがクラッカーだと気づいたのはすぐだった
「「「メリークリスマス!!!」」」
聞きなれた声が私を出迎えた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。