第27話

27.優しさってあったかい
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2022/12/04 02:06
ヒラ
おはよあなたちゃん
あなた
ん……!?


目の前にヒラの顔があった
キヨ
着いたぞ
あなた
…え?


慌てて見渡すと車はすでに止まっていた

ヒラがドアを開けて私を起こしたことからも、止まっていることは分かっていたはずだ
しかし、私は寝起きで思考が追いついていなかった
フジ
まだ眠い?


フジの言葉にハッとする
あなた
もしかして寝ちゃってた!?
キヨ
寝てたぞ
ヒラ
気持ちよさそうに寝てたね
フジ
今日は沢山歩いたからね。疲れちゃったんだよ


三人の言葉に恥ずかしくなって俯いた
あなた
あれ?このコート…


言い切る前にキヨが乱雑にコートを取り上げる
キヨ
…ほら外出ろ


キヨに差し伸べられた手を取って外に出た

こちらを振り返りもしないキヨの服の裾を握る
あなた
ありがとう…キヨ
キヨ
………


返事は返ってこなかった





ーーーーーーーーーー




ヒラとフジも私たちの前を歩いている

それ以前にここはキヨの住んでいるマンションではない

二人が家まで来るという訳ではなさそうだ


ここはどこだろう?
あなた
ねぇ…ここどこ?


マンションということしか分からない
フジ
あれ?言ってなかったっけ?
ヒラ
あなたちゃんはよく知ってるとこだと思うよ


そう言いながらヒラはエレベーターのボタンを押した





しばらくして止まった階に降りる

フジが一つの扉の前で止まった
フジ
ピンポンする?
ヒラ
別にいいでしょ


フジが鍵を開けて扉を開けた
フジ
さあどうぞあなたちゃん
あなた
う、うん


マンションの一室に入る
ごく普通の部屋に見える

見覚えがある気がする
ヒラ
思ったより時間かかっちゃったね
キヨ
お前らが色々買ってるからだろ


二人の声とは別に部屋の奥からも声が聞こえてきていた





こーすけ
お、やっと来たか


物音がしたと思ったら一人の男が目の前にいた
あなた
あ、こーすけさん!?
こーすけ
ん?あ、あなた…ちゃん?
あなた
あ、はい!
キヨ
お前いつもそのリアクションだな…俺の時は驚いてもくれなかったのに


後ろでごにょごにょ言ってるキヨの言葉は無視する
あなた
最俺だ…!


画面の向こうの光景が再現されたような感覚に心が踊る
こーすけ
そこかよ


こーすけは苦笑した
こーすけ
まあ知ってるかもだけどこーすけだ。よろしく
あなた
よ、よろしくお願いします!!
こーすけ
気軽に話してくれていいからな


興奮して話しているとフジが扉から顔を覗かせた
フジ
あなたちゃん寒いからこっち来な
ヒラ
行こ


ヒラに促されるまま扉を通った





パンッパンッ…パンッ


突然乾いた音が響いた
テープのようなものが飛んでくる

それがクラッカーだと気づいたのはすぐだった



「「「メリークリスマス!!!」」」


聞きなれた声が私を出迎えた

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