第24話

24.今日はいい日になりますように
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2022/10/30 02:35
あなた
…キ、ヨ


見慣れ始めた天井が視界に入った
自然と出た名前にハッとしてあたりを見回した

キヨはいない
あなた
よかった…
キヨ
何がよかっただよ


ドアがガチャりと音を立てて開いた
そこにはやっぱりキヨが立っていた
あなた
え、あ…なっ何でもないよ!
キヨ
…そうか。おはよう
あなた
お、おはよう


もう暖かい布団にも慣れてしまったのか震える体をさする
あなた
寒い…


そう呟くとキヨは笑った
キヨ
そうだな。暖房ついてるから早く来い


扉が閉まる


こんなにもこの家に慣れてしまった
薄着で外にいたあの日を思い出す



もうこの心地よい温もりを忘れることは出来ない


ーーーーーーーーーー


あなた
キヨどうしたの?朝早いね


つけっぱなしのテレビからは今日の天気について話すキャスターの声が聞こえる

聞きなれたクリスマスの音楽とともに雪が降る街の映像が流れていた
キヨ
今日は出かけるからな
あなた
どこか行くの?気をつけてね
キヨ
お前も行くんだよ
あなた
え?
キヨ
ほら用意しろ


急かされるまま用意をする

スマホを操作するキヨはどこか嬉しそうに見えた





ーーーーーーーーーー
フジ
で、また俺かい
キヨ
お前しかいないだろ
フジ
人使い荒いわ
ヒラ
そうだそうだー
キヨ
お前は呼んでねえよ
ヒラ
えー僕だって噂のあなたちゃんに会いたかったんだもん
キヨ
だもんじゃねえよ。後で…あーまあとにかく帰れ!
フジ
ヒラ、こーすけは?
ヒラ
仕事あるから後でだって
フジ
そっか~
キヨ
…あーもう!


賑やかな三人の中に入れず、仕方なく笑う





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凍るように寒い外に出ると、あの時と同じような光景が広がっていた
車とフジと…そして見慣れない人が一人
こちらに笑顔で手を振る男に見覚えがあった
あなた
もしかしてヒラ…さん?
ヒラ
そうだよ。君があなたちゃん?
あなた
は、はい!




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ヒラ
じゃあ改めて自己紹介ね。ヒラでーす


そう言って目の前の男は優しく笑った
あなた
は、初めまして。あなたと言います
ヒラ
よろしく。僕のこともキヨとフジと同じように呼び捨てでいいよ
あなた
あ、う、うん!よろしくね
ヒラ
仲良くしてね~


走り出した車の中で賑やかに声が響く
フジ
キヨ次どっち?
キヨ
フジ
了解


厚い雲か空を覆った東京は朝なのに薄暗い

どこかに向かって車は動いていた
あなた
キヨ。どこに行くの?
キヨ
行けば分かる


はぐらかされたまま独り言のようにキヨは呟いた
キヨ
今日はいい日になるといいな

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