第5話

結婚生活⑤
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2020/05/28 14:20
それからも順調に結婚生活は続いた。
もちろん時々ケンカをしたり
良い意味でも悪い意味でも
"隆二にも、こんな一面があるんだ"
そんな風に思った。
でも嫌な所を見ても隆二を嫌いになる事は無い。
私は何となく"愛"って、こうゆう物なんだと思った。

そんな時、隆二は何だか悩んでいる様な様子を見せるようになった。
隆二は家に帰ると仕事の話を持ち込まない。
聞けば答えるけど自分からは話さない。
でも明らかに、ここ最近の隆二は様子が、おかしい。
私は嫌な予感がした。
早く、どうにかしなきゃと思った。
『隆くん、最近何か様子おかしいよね?ご飯も、あんま食べないし。何かあるなら話して。夫婦でしょ?一緒に乗り越えようって約束したよね?』
隆二の顔が曇った。
私に気が付かれてないと思っていたんだと思う。
「別に何もないよ。」
『何もないなら悩んだ顔も曇った顔もしないよね?私、頼りないけど隆くんの奥さんだよ?何も知らない奥さんなんて悲しいし、そんなの夫婦じゃないよね?』
すると隆二は大きなタメ息を付いた。
「あまねには隠せないね!最近仕事が大変で。社長の息子の事とかさ使えないバイトとかさ突然来ないバイトとかさ。」
隆二が入院してから社長の息子は隆二の弟子として、こっちで働く様になった。
支店を任されてる隆二はバイトの面接、バイトのシフト組み、社長の息子の教育と色々仕事で心が疲れていたみたいだった。
更に驚く事に
「バイトの給料も俺が払ってんだよ。」
隆二の会社は給料手渡しだったから私は知らなかった。
『なんで隆くんがバイトの給料払うの?おかしくない?』
「もちろん、社長が後でくれるんだけど給料日前に持って来ないから一時的に俺が立て替えてた。」
『社長は頭おかしいの?そんなの隆くんの仕事じゃないでしょ?給料日前に持ってくるのが当たり前だし息子に振り込むなり出来るじゃん?』
「バカ息子に振り込むと全部使っちゃうらしくて。」
『はぁ?本当にバカ息子じゃん!』
「…もう疲れた。辞めたい。」
ここで初めて隆二の気持ちが聞けた。
『隆くん、そんな腐った会社辞めな!とりあえず、お金は蓄えがあるから次の仕事探そう!隆くんに病まれたら私、困るもん!』
「でも一応、責任者だからさ。」
『それは、わかる。私も今、マネージャーしてるから。でも仕事はしないと生きていけないけど、それには健康な体が無いと無理でしょ?しかも、そんな腐った会社の事、隆くんが心配する事ない。バカ息子に丸投げしてやれば隆くんの苦労を社長も息子も必ずわかるから!』
ただ問題が1つ。
このアパートは会社が借りてるアパート。
会社を辞める=アパート退去
『私は隆くんとなら狭くてもボロボロでも住めたら良い!アパート探そう!』
「だったら、この辺りから離れたい。」
『じゃ私は自分の実家の近くに住みたい!』
「それ、いいね!実家のマンションの近くに住もう!でも、あまね仕事は?せっかくマネージャー任されたのに…俺のせいで。」
『別に仕事なんて何でも何処でも出来るから。確かに今、凄く仕事が楽しくて辞めたくないけど何より大切なのは隆くんとの生活。だから気にしないで!』
「あまね、ありがとう!スッキリした!」
『一緒に頑張ろう!』

隆二が会社を辞める事を社長に伝えた。
隆二に辞められたら困ると何度も何度も引き留められたけど隆二は辞めると伝えた。

そして最終的に社長が納得し仕事を辞められる流れになった。
次に住む家を探さなきゃならない。
私もオーナーに辞める事、伝えなきゃならない。
心苦しかったけど伝えた。
オーナーには
「困るよ!藤堂さんに辞められたら店回んないよ!アパート用意するから辞めないで!」
そこまで言われたけど隆二が離れたいと言っている以上、夫婦離れて暮らすなんて出来ないし何より私は隆二と一緒に居たい。
『オーナー、ありがとうございます。そこまで必要として頂けて光栄です。でも主人を支えたいので申し訳ありませんが辞めさせて頂きます。』
渋々オーナーは納得してくれた。

それから私達は新たな生活の準備に追われた。

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