第11話

ないん
966
2022/03/12 04:25
1箇所だけ、アテがあった

ロディが仕事を引き受けている場所、おじちゃんが営んでいるバーだ

私は全速力で、そのバーまで走った
私はバーに着くなり、バンッと勢いよく扉を開けた
あなた
おじちゃんっ!
バーの店主
うおっ、あなた!? おい! ドア壊れたらどうすんだ!
今はバーの営業時間、この店が1番賑わう時間帯だ
あなた
ごめん急いでるの! ねえ、ロディ見てない!?
バーの店主
あぁ? こっちが聞きてえくらいだよ!
アイツ、商品を届けないまんま帰ってこねえんだ!
あなた
商品を届けてない……?
おかしい、ロディは仕事を途中で放り出すような人じゃない

生活をしていくため、お金をもらうため、仕事はちゃんとこなすはず
バーの店主
あの電話以降連絡もこねぇしよ……!
あなた
電話きたの!?
バーの店主
1、2時間前にな
「弟たちに今日は帰れないって伝えといてくれ」とか言われた気がするが……
あなた
なんで伝えに行かなかったの!? 2人ともすごく心配してたんだから!
バーの店主
うるせぇ! こっちはアイツのせいで大損なのに、なんで俺が言うこと聞いてやんないといけねぇんだ!
ッたく……俺は忙しいんだ、帰った帰った!
あなた
…………わかった、ありがと
私はまだ探すから、もしも帰ってきたら絶対教えてよね!
納得はしていなかったが、今はそれどころじゃない。ロディを探すことが最優先だ

私は足早に、商店街の方へ駆けて行った
街中を走り回り探したが、ロディの情報は全く出てこなかった

街中に知り合いがたくさんいるおばちゃんなら知ってるだろうと思い、八百屋まで向かった

店は既に閉まっていたため、裏口の扉をノックした
あなた
おばちゃん!
八百屋のおばちゃん
おや、あなた。こんな時間にどうしたんだ? 忘れ物かい?
あなた
あのね、ロディがいなくなっちゃったの! 何か知らない!?
八百屋のおばちゃん
ロディが……? すまないけど、アタシは何も知らないねぇ……
あなた
……そっか…………
少しの静寂の間、おばちゃんの家の中からニュースの音が聞こえてきた
『今回12人もの大量殺人を行ったのは、日本のヒーロー”デク”。本名”イズク・ミドリヤ”容疑者。犯人は未だに逃亡中で──』
八百屋のおばちゃん
大量殺人だなんて、ほんと物騒でやだねぇ……
日本からはるばるオセオンまで来て、いったい何がしたいんだか……
……嫌な考えが頭をよぎった。もしかしたらロディは、その殺人犯に殺されてしまったんじゃないか

もしかしたら拉致されていたり、人質にとられたりしているんじゃないか

そんなことを考えると、全身の毛穴から嫌な汗が吹き出てきた
八百屋のおばちゃん
だ、大丈夫かい!? ごめんね、今すぐ消すよ……!
あなた
い、いいの、大丈夫……
ご、ごめん、もうちょっとだけ探すから、もう行くね。ありがとう!
八百屋のおばちゃん
あ、ちょっとあなた!
私はその場から逃げるように、急いで大通りの方へ出ていった
大通りはいつもの倍ほど、人気が少なかった

あの殺人犯のニュースのせいか、ただ夜だからなのか。そのどちらでもあるような気がした
あなた
……月、眩しいなぁ……
私の今の心情とは裏腹に空は雲ひとつなく晴れ、月がこの街を明るく照らしていた

ただ光る月を見ていると、目の奥からじんわりと、涙が溢れてきた
あなた
(だめ、泣いちゃだめ。私が笑顔で振る舞わないと、あの子たちがもっと不安になっちゃう)
そう思って耐えようとしても、瞳からはぽたぽたと涙が落ちてくる
あなた
どこ行っちゃったの? ロディ……!!
小さく呟いた私の声は、夜の闇へと消えていった


それから数日間、結局、ロディは帰ってこなかった


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