たしかにそういったんだ。
とも…だち………
今まで僕のことを友達と呼んでくれる人はいなかった。
ふしぎだった。
どうしてこんな僕と友達になんてなってくれようとしてるのか。
初対面の僕と。
ぼくは無言で手を出した。
拝啓おかあさんへ。
独りだった僕に優しいおともだちができました。
はれて友達ができた僕。
あれ…でも僕………
どこに帰ればいいんだろう…?
怖いおとうさんも、優しいおかあさんも、もう
いない。
どうしたらいい?
どうすればいい?
わからない。
そう考えれば考えるほど蘇るのはあの記憶。
たくさんの血とたくさんの朱。
知らない大人の人達。
誰もいなくなった家。
考えれば考えるほど悲しくなって、怖くなって、虚しくなる。
ハッと我に返る。
優しい声が僕の耳に届く。
どうしよう…困らせたいわけじゃないのに…
何かあるのかと、江口さんは優しく語りかけてくれる。
このとき僕は 震えていた。
怖かった。
独りになるのが、取り残されるのが、
孤独なのが、誰も…いないのが…
大きなお家?みたいなとこと
にこにこしてるお姉さん…
僕や江口さん達以外にもたくさんの子供…
なぜこんなことに…?
遡ること10分前…
多分…違う…
蒼崎美波と名乗る女の子。
この子は…独りを知ってる子だ…
そこから僕は今日のことを話した。
僕が話してる間、江口さんと蒼崎さんは優しく聞いてくれた。
ギュ
その瞬間
耐えてたものがくずれて
貯めてたものが溢れて
それが全部一緒になって
涙になった。
止まらない
いくら言葉をはきだしても
止まらない
ギュ
もう一つ温もりが増えた
もう止まれない
僕たちはそこで抱きあって泣いていた。
お互いの存在を確かめ合うように。
自分は一人じゃないと証明するように。
三人が落ち着いたとき江口さんが言った。
え?どゆこと?僕たちの…家………
なる…ほど…
でも…僕なんかがそんな…
蒼崎さんは一息つくと
と言った。
まぁこの一言で揺さぶられ結局来てしまいました。
大きな家にたくさんの子どもたち。
たくさんの先生たち。
たくさんの声。
頭の中でこだまする、【かわいそう】
かわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそう
その静かな言葉は誰にも届かず
言葉に呑まれていった。
はずだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。