第24話

始まりと終わり
290
2021/07/12 13:17
幼少期の拓也
僕と友達になんない?



たしかにそういったんだ。


とも…だち………


今まで僕のことを友達と呼んでくれる人はいなかった。



幼少期の宏太朗
な、なんで…


ふしぎだった。


どうしてこんな僕と友達になんてなってくれようとしてるのか。

初対面の僕と。



幼少期の拓也
んーなんでだろう…友達になりたいって思ったからかな?
幼少期の拓也
それに、友達になりたいと思うのに理由なんていらないでしょ?
幼少期の拓也
ニコッ
幼少期の宏太朗
………
幼少期の拓也


ぼくは無言で手を出した。




幼少期の宏太朗
よろしく…お願いします
幼少期の拓也
ひひっよろしく!






拝啓おかあさんへ。





独りだった僕に優しいおともだちができました。






















幼少期の美波
(私…空気じゃん…)
















はれて友達ができた僕。


あれ…でも僕………








どこに帰ればいいんだろう…?





怖いおとうさんも、優しいおかあさんも、もう




いない。





どうしたらいい?

どうすればいい?

わからない。



そう考えれば考えるほど蘇るのはあの記憶。


たくさんの血とたくさんの朱。  

知らない大人の人達。


誰もいなくなった家。




考えれば考えるほど悲しくなって、怖くなって、虚しくなる。



幼少期の拓也
宏太朗…?
幼少期の拓也
大丈夫?


ハッと我に返る。

優しい声が僕の耳に届く。


どうしよう…困らせたいわけじゃないのに…


幼少期の拓也
落ち着いて…?大丈夫、大丈夫だよ



何かあるのかと、江口さんは優しく語りかけてくれる。


幼少期の宏太朗
ど、どうしよう…江口さん…
幼少期の宏太朗
ぼ、ぼく…今、、独りぼっちだ…







このとき僕は     震えていた。


怖かった。


独りになるのが、取り残されるのが、

孤独なのが、誰も…いないのが…
























施設の人
こんにちは(^^)宏太朗くん。
幼少期の宏太朗
こ、こんにちは…

大きなお家?みたいなとこと

にこにこしてるお姉さん…

僕や江口さん達以外にもたくさんの子供…




なぜこんなことに…?



















遡ること10分前…


幼少期の拓也
一人…?え?僕たちがいるよ?
幼少期の宏太朗
あっいや…


多分…違う…


幼少期の美波
"一人"じゃなくて"独り"なんじゃない?
幼少期の宏太朗
えっと…?
幼少期の美波
あっ私!蒼崎美波!たっくんとは同い年です


蒼崎美波と名乗る女の子。


この子は…独りを知ってる子だ…




幼少期の美波
独り…つまり孤独ってことでしょ?
幼少期の宏太朗
う、うん…
幼少期の拓也
どうしてなのか…教えてくれる??







そこから僕は今日のことを話した。











幼少期の拓也
うん…うん。そっか


僕が話してる間、江口さんと蒼崎さんは優しく聞いてくれた。



ギュ

幼少期の宏太朗
え…?
幼少期の拓也
話してくれて…ありがとう
幼少期の拓也
大丈夫。よく頑張ったね宏太朗。


その瞬間



耐えてたものがくずれて

貯めてたものが溢れて

それが全部一緒になって



涙になった。



幼少期の宏太朗
うぅっグスッえ、江口さっ…ぼ、…ぼくっ…
幼少期の拓也
うん…大丈夫。いいよ、全部全部…僕が受け止めるから
幼少期の宏太朗
おっおかあ…さんに…っ…生きてて…っ欲しかった…、

止まらない

幼少期の宏太朗
しんでほしくっ…なかった…!

いくら言葉をはきだしても

幼少期の宏太朗
もっと…いっしょに…っ…いたかった……

止まらない

幼少期の宏太朗
おいて行かないで…ぼっぼくを…独りにしないで…っ!
幼少期の美波
!!

ギュ

もう一つ温もりが増えた

幼少期の美波
辛かったよね…怖かったよね…もう大丈夫だよ…

もう止まれない





僕たちはそこで抱きあって泣いていた。


お互いの存在を確かめ合うように。

自分は一人じゃないと証明するように。








幼少期の拓也
じゃあ宏太朗は今帰るとこないんだよね?


三人が落ち着いたとき江口さんが言った。

幼少期の宏太朗
は、はい…
幼少期の拓也
じゃあさ、僕たちの家に来ない?
幼少期の美波
たっくん!!??


え?どゆこと?僕たちの…家………


幼少期の拓也
実は僕たち孤児でさ、みんなの家みたいなとこに住んでるんだ。
幼少期の拓也
よかったら一緒に住まない?

なる…ほど…

でも…僕なんかがそんな…

幼少期の美波
『僕なんかがそんなとこ行っていいのかな』
幼少期の宏太朗
え!?
幼少期の美波
その反応…図星だね?
幼少期の美波
大丈夫。まぁ私としては少し心配だけど…

蒼崎さんは一息つくと

幼少期の美波
独りはさみしいじゃん?
幼少期の美波
ね?一緒に行こうよ


と言った。



















まぁこの一言で揺さぶられ結局来てしまいました。


施設の人
じゃあこれからよろしくね宏太朗くん。
幼少期の宏太朗
よろしくお願いします…


大きな家にたくさんの子どもたち。

たくさんの先生たち。




たくさんの声。


???
ねぇ、あの子まだ小さいのに可愛そうねぇ
???
可哀想に…今までの子たちよりひどいわねぇ
???
可愛そうねぇ


頭の中でこだまする、【かわいそう】



かわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそうかわいそう
幼少期の宏太朗
そっかぁ…僕、可愛そうなんだ((ボソッ




その静かな言葉は誰にも届かず

言葉に呑まれていった。

























はずだった。
幼少期の拓也
"可愛そう"なんかじゃないよ…っ…((ボソッ

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