Side:シリウス
見慣れない天井を見ながらそうつぶやく
この天井が見慣れたものになる日なんて来るのかな
こんなにきれいな天井なんて生まれて初めて見た
というか、天井までこんなに遠いってこと自体おかしいと思う
まあ、今までの僕の生活がおかしかっただけなんだろうけど
あれが、僕の、僕が暮らしてきたあの場所での”普通”だったから
とりあえずあの人がいそうなリビングへ
いつまでもベッドの上で天井を見上げているのもおかしいし、きっとあの人は心配しているだろうから
そう考えた僕はゆっくり体を起こすと、リビングへと……
天井に慣れる以前に、この家の構造を覚えるところから始まるみたいだ
小さくため息を吐きながら、それでもあふれ出る笑みを抑えることはできなかった
だって……楽しそうじゃん
僕はドアに手をかけ……ようとしたところで勝手にドアが開く
思わず尻もちをついちゃったけど、そのおかげで助かった
僕の足先を掠めるようにして……つまり、僕がついさっきまでいた位置を通ってドアが開く
驚いて固まっていると、ドアの先から人が出てくるのが見えた
ゆっくりと視線を上げていくと、そこにあった顔は
僕に向かって手を差し伸べている、今まさに探そうとしていた相手であり、新たに僕の養い親となった人物だった
そうやって笑いかけるこの人のことが、僕には理解できなかった
あの日、僕とこの人が出会った日
あの後、抱きしめられた
辛かったな、って言われたけど、正直よく分からなかった
孤独も、飢えも、辛かったけど……きっと、この人が思っているものとは違う
親なんて、いてもどうせ変わんないし
ごめんな、とも言われたけど、どうして謝られているのか分からず、何も言えなかった
そして、俺の子どもになるかって、聞かれた
わけが分からなかった
大変そうな手続きをしてまで、僕を子どもにするのは何で?
僕はいてもいなくても変わらないような存在だから、捕まえて閉じ込めておけばいいのに
何で僕なんだろ、本当に理解できない
……でも、きっと全部善意でやってるんだろうな
だって、僕が今まで見てきた人と違う目をしてるから
明るくて、まぶしくて、温かくて……何となく、なつかしいと思った
だから、理解はできなかったけど、僕はその言葉にうなずいたんだ
何で2回おはようって言ったんだろ
分かんないことだらけだ
それでも……
この人…アルさんのことは、信じてみようかな






















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!