Side:アル
昔の夢を見た
俺が小学校に通っていたときの夢だ
自信を持って答えていた己の姿を思い返す
あの頃の俺はまだ、何も分かっていなかったんだ
結局今も昔もあまり変わらないのかもな
苦笑した己の姿を鏡越しに眺めながらそう呟く
窓の近くの木に止まっていた鳥が逃げていくのが見えた
今日は仕事で退廃地区を見に行く
こういうことだけ俺に押し付けやがって…いや、俺も人の事言えねぇか
普通この街の住人は退廃地区に行くことはない
俺もその例に漏れず今回が初めてだ
正直あそこが治安が良いとは言えない
まあ行き先に困った者が行き着く先だからそれも当然だろう
だから普通の人は行きたがらないし、むしろ嫌っている
だが、統治者からすると悪いことだけではない
犯罪者あるいは厄介な人物を隔離できるんだ
そのお陰もあって他の街の治安を守れる
必要悪といったところか
だからこそ、
こう、思ってしまうわけだ
まあ、考えてわかるわけじゃないしそろそろ行くか
家に誰もいないことは分かりきっているのに思わず口から言葉が漏れる
ずっと引きずってるだなんて
その声は、白く濁った息となり、周囲の喧騒に溶けていった


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。