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第6話

逃げないと
13
2021/01/23 02:12
必死であの殺人鬼から逃げる。

少し先を走る新那さんと深良ちゃんの後を追いかけながら、ちらっと後ろを振り返った。
一華
一華
(あれ…あの子…)
私の目線の先には皆が逃げ惑う中、1人だけ動かずじっと立っている男の子がいた。
その子は立ったままぼんやりと空を見上げている。

──その時、視界の端に男の子に向かって走り出す、殺人鬼の姿が映った。
一華
一華
──ッ!危ない!
考えるより先に体が動いていた。
踵を返し、男の子の方へ向かって走る。
新那
新那
一華!?
深良
深良
一華ちゃん!
新那さんと深良ちゃんの叫ぶ声が聞こえた。
でも、私の足は止まらなかった。
一華
一華
危ない…!逃げてっ…!!
もう一度そう叫ぶと、男の子がこちらを見た。
?
何だアンタ…
男の子がそういいながら、私から目を反らすように視線を殺人鬼の方にやった。
?
──ッ
殺人鬼の姿を見た瞬間、男の子の顔が強ばる。
一華
一華
こっち!
私は男の子に駆け寄ると、その腕を引いて新那さん達の方へ走った。
?
ちょ、おい!
一華
一華
いいから!
…ジャリッ、ガシャンッ…ガシャッ、ザッザッザッ
後ろから殺人鬼の追いかけてくる足音が聞こえる。
新那
新那
一華!こっちだ!
新那さんが遠くで呼んでいる。
一華
一華
新那さん…っ
ザッザザッ…ガシャンッ
殺人鬼の足音は真後ろにまで迫っている。
一華
一華
(殺人鬼アイツは、今、どこに…)
そう思い振り替えると、殺人鬼は私たちのすぐ後ろにいた。
全然、距離は開いていない。




殺人鬼が鎌を振り上げる。
一華
一華
───!!
とっさに男の子の腕を引いて転がるように横に倒れた。



ザンッ!!!!!

鎌が振り下ろされた。
新那
新那
一華!!
一華
一華
はっ……
鎌は、私たちがさっきまで立っていた場所に刺さっている。

とっさに転がったお陰で上手く避けることができたようだ。
一華
一華
(逃げ…ないと…)
鎌は避けられたものの、今ピンチなのは変わらない。
立ち上がって逃げようとするが、恐怖で体が動かない。
横を見ると、男の子も顔をひきつらせ、硬直している。
たくさん纏った布の下から、殺人鬼の濁った目が私たちを見た。
一華
一華
ひっ……
殺人鬼が再び鎌を振り上げる。
一華
一華
(もう駄目…!)
覚悟してぎゅっと目をつむった。

──その時
ヒュッ──ガンッ!!!
一華
一華
!?

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