藍沢side
初めてあなたちゃんを見かけたのは病院のロビー
女の子が的確かつ素早く処置している姿をみて、息を飲んだ
見たことがないスピードで、俺が処置をするスピードより早かった
普通だったら「キャー!」とか「誰かいませんか!」とか、声を上げるのが普通だから
その子だけは違った
身体が小さいながらも、一生懸命助けようとしていた顔は医者そのものだったから
俺はその子の姿に
―――――――――――――――――――一目惚れした
まてまて、相手は中学生だ
高校生ならまだしも……高校生でもだめか
連絡を貰って、冴島と緋山と患者の元へ行った時に隣にいた冴島が
「あなた!」
と声をかけた
内心、心当たりがある名前だなと思った
「あなた、疲れちゃうから、変わるよ」
緋山がその子の元に走っていった
その子は受付でオペ室の場所を聞いていて、先に向かっていった
その子に何があるのだろ……
なんて思ってたら
緋山の声で我に返り、その子から患者を受け継ぎ処置室に走った
あの子の的確な判断で患者は助かった
診断結果はあの子の推測通り脳出血だった
だが俺達の出番はないみたいだった
あの子がすごいスピードで手術を行った
みんなで医局にいったら既にあの子は医局でくつろいでいた
冴島あなた
どうやら人見知りのようで、俺のところまで姉と一緒に来た
柄にもなく、するりと言葉が出てきた
頭を撫でてやると
………………………………………………………………可愛い
いや、くふふってなんだ
恋愛に疎い俺はなんかよく分からない感情になった
たくさん……話してみたい
と聞いたところ
見せてきたのは医師免許
れっきとした医者だった
しかも
俺と一緒
こんなに小さくて可愛い子が俺と同じなんて
新海には会わせたくない
ふとそんなことを思った
その時、
誘われた
ここで素直に行くと言えば、みんなが驚くうえ、俺の威厳が無くなりそうだったから黙った
……誘われた
と返事をし、あなたは帰って行った
脳外科で少し仕事をし救命に帰ってくるとあなたちゃんを送りにいった冴島が帰ってきていた
手術するほど悪かったのか?
と思っていたら
ああ、そっちか
その時冴島が電話をかけた
どうやら手術をしているのは秘密にしているらしい
電話越しに
バレちゃったらしょうがないという声で話が聞こえた
聞けば今日の手術はアメリカからの依頼らしい
どうなってんだ
あなたの技術を見てみたい
今までなかった感情が溢れ出した
橘先生から、
そう言われた
滅多にない機会だ
内心興奮しながら俺は帰り支度を始めた
ねくすと
このあとはー!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!