いつも遠回しにいじめられる。
いつもみんなは見て見ぬふりをする。
いつも距離を置かれる。
この高校に入っても、全くと言っていいほど変わらなかった。この世にいては何も変わらないのだと悟る。
「えぇ……では、図書委員の立候補者は……」
今はクラスの委員決め。
図書委員……ならやってもいい。どうせ、やりたい人なんていないし、面倒な仕事は僕みたいな人にやってほしい…そういうのがみんなの本音だろう。
僕はそっと手を挙げた。
先生がそう尋ねる。
満場一致……だと思っていると、綺麗な白い手が伸びた。
僕は去年も全て一人で完璧にこなした。一人で十分だ。一人の方が集中できるし、はかどる。
頼むから余計なことはしないでくれ……と言いたかったが、僕にはクラスのみんなの前でそんなことを言う勇気はない。
は……!?
僕は五秒くらい空いた口が塞がらなかった。
図書委員が四人!?
背筋が凍る。
ありえない。先生、いくらなんでもそれは多すぎる!
夜菜さんに、須貝さん。
夜菜さんが立候補するのは意外だったけど、この二人なら特に害はなさそうだ。
あと一人……あの大人しい子が入ってくれれば何とかやっていけそうだが。
瀬木……!?どうして……!
地獄だ。真っ暗な未来しか見えない。
僕は一瞬にして目の前の光を失った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。