第5話

タイムカプセル
13
2022/08/15 10:30
携帯の着信音で目を覚ます。
風春 鈴
朝から誰...
眠くて、まだ完全に開いていない目を擦りながら、携帯に手を伸ばす。画面に表示されたのは、冬香の名前。
風春 鈴
『は〜い...何〜?』
晴風 冬香
『あ。ごめんなさい。寝てましたか?』
風春 鈴
『ん〜ん。大丈夫〜...』
こういうところがアキと全然違うんだよな〜と思いながら、返事をする。
晴風 冬香
『......今日は、8月1日ですね...』
冬香の言葉で一気に目が覚めた。
1ヶ月前の7月1日。結局、その日に全ての資料を見れた訳では無いが、ほとんどの資料を読み終えた帰り道に皆で同時に、「1ヶ月後の8月1日に」と言ったのを覚えている。
風春 鈴
『そっか...1ヶ月は早いな〜』
少し笑いながら、冬香に言う。少し冬香が暗く感じたから。でも、携帯の向こう側の空気は変わらなかった。
晴風 冬香
『約束...覚えていますか?』
風春 鈴
『勿論。覚えてるよ』
風春 鈴
(暗くなるのも当たり前だよね...)
今日は、空牙が来るかもしれない日。タイムカプセルを掘り起こそうと4人で約束した日。
晴風 冬香
『...絶対に来てください』
風春 鈴
『うん。絶対に行く。2人も来てくれるよ』
晴風 冬香
『そうですよね...すみません。少し心配になっちゃって』
無理して笑う冬香の顔が簡単に浮かぶ。
風春 鈴
『大丈夫だよ。それにさ、もし来なかったら、その人の分も開けるって約束じゃん?』
晴風 冬香
『はい』
風春 鈴
『心配しなくても大丈夫。ね?』
晴風 冬香
『ありがとうございます...』
風春 鈴
『ん〜ん。じゃあ、また夜に』
晴風 冬香
『はい。また、夜に』
冬香との電話を切り、仕事に行く準備をする。目が覚めたことも1つの理由だが、最近家に持ち帰って仕事をすることが増えてきているから、今日こそは定時に帰り、そして仕事も全て終わらす為に。
風春 鈴
お疲れ様で〜す
会社から出て、一度家に帰る。流石にスーツで行くのは動きづらかったりするから。
家に帰って、ジーパンに半袖という動きやすくそれでいてシンプルな服に着替える。
風春 鈴
行ってきまーす
歩いて約束の場所に向かう。いつも通り、同じ時間に終わったのであれば、冬香とアキが先に居るはず。着くまでは、ただ空牙が来ていることを願うだけだった。
風春 鈴
冬香!アキ
約束の場所である大樹の下にアキと冬香の姿が見えて、名前を呼びながら、手を振り駆け足で2人の元に行く。
和雲 秋
明らかに呼び方の強弱をつけんな‼︎
風春 鈴
つけてませーん
和雲 秋
つけてただろ⁉︎
何か言ってくるアキを無視して、冬香の元に行く。
風春 鈴
まだ来てない?
晴風 冬香
はい...
風春 鈴
そっか〜...
晴風 冬香
どうしますか?
風春 鈴
もう少し待とう
晴風 冬香
そうですね...
和雲 秋
来れば良いけどな...
風春 鈴
アキ!
和雲 秋
分かってるよ‼︎来るって信じてはいるわ‼︎
風春 鈴
......あっそ
和雲 秋
ったく...なんなんだよ
それから、しばらく待つがなかなか空牙は来ない。
風春 鈴
............来ないね
和雲 秋
来ないな
晴風 冬香
来ないですね...
風春 鈴
もう10時だし、掘り起こす?
和雲 秋
そうするか...
そう言って、アキが鞄の中から、スコップを取り出した。そして、確か埋めた場所を掘り始めた。
和雲 秋
いや、手伝えよ!!!
風春 鈴
スコップ持って来てなーい
和雲 秋
はぁ!?
ぶつぶつ文句を言っていいながら、掘り起こしているアキを放って置き、冬香に話しかける。
風春 鈴
何埋めたか覚えてる?
晴風 冬香
そうですね......覚えていません
風春 鈴
やっぱり?
晴風 冬香
やっぱりということは...
風春 鈴
私も覚えてないんだよね〜
晴風 冬香
ふふ...何が入っているか楽しみですね
風春 鈴
そうだね
冬香と話していると、アキが掘っているところから
カンッ
と、何かに当たった音がした。
風春 鈴
当たった?
和雲 秋
あぁ
アキが土の中から取り出したのは、土で汚れた銀の箱だった。
和雲 秋
開けるぞ
風春 鈴
うん...
晴風 冬香
はい...
少し緊張が走る。恐る恐るアキが箱の蓋を開け始めた。
和雲 秋
...開いた
箱の中には、それぞれの名前が書かれた手紙とその時に大切にしていた物などが入っていた。
和雲 秋
これ、俺のだ!
アキが取り出したのは、輝く何かの宝石がはまっている指輪が入った小さな箱。
風春 鈴
指輪?
和雲 秋
あぁ。お前らに初めて貰った誕生日プレゼントだよ
風春 鈴
あぁ!それか!冬香は?
和雲 秋
反応薄っ
風春 鈴
そんなに薄くないし
晴風 冬香
私は、これです
冬香が見せたのは、よく4人で読んでいた本。
風春 鈴
懐かしい〜
晴風 冬香
大好きなんです。この本
そう言って、冬香が本を抱きしめる。
和雲 秋
で?お前は?
風春 鈴
私はね〜...
箱の中からしおりを取り出す。
風春 鈴
これ!
色とりどりの押し花の真ん中に四葉のクローバーが入っているしおり。
和雲 秋
あぁ...4人で一緒に作った...
風春 鈴
そうそう!
ネックレスについているクローバーの葉の1枚をイメージした物を触る。
和雲 秋
そういえば、ナツもそれ...今つけてんのかな?
風春 鈴
どうかなぁ...
晴風 冬香
きっとつけていますわ