第3話

失踪①
17
2022/08/08 11:36
4年前____
その日は、休日で家で特別にやることなども無く、前日に終わらなかった仕事をしている途中だった。
急に携帯の着信音が鳴り響いた。電話をしてきた相手はアキ。
ピッ
風春 鈴
『何?仕事中なんだけど』
どうせ自分には関係無いことだろうと思い、アキからの電話に出た。
和雲 秋
『どうせ、昨日の残りだろ』
風春 鈴
『そうですけど!』
和雲 秋
『って、そんなこと言ってる場合じゃ無くて!』
風春 鈴
『そんなことって何⁉︎』
私の言い返しにいつもは、乗ってきて口論になるところだが、今回はアキが私の言葉を無視し、そのまま爆弾発言を投下したことで、口論どころでは無かった。
和雲 秋
『ナツが.....消えた』
風春 鈴
『......は?』
その後どんな会話をしたかは、覚えていない。気づいた時には、服も着替えず、自分の家にいた時と同じ姿で空牙の家の中に立っていた。家の中には、冬香とアキが居り、家の主である空牙本人は何処にも居なかった。
風春 鈴
......誘...拐?
和雲 秋
いや、違う。そう見えるけど、この荒し方は争った跡では無い
部屋の中は、置き物が壊されたり、資料が散らばったりと、争ったような状態だった。でも、アキは、争った訳では無いと言う。
風春 鈴
じゃあ!これは何⁉︎
和雲 秋
わざとだろうな
風春 鈴
は?それって、空牙自身が荒らしたとでも言うの...?
和雲 秋
あぁ
風春 鈴
はぁ!?
アキの胸ぐらを掴む。冬香が止めようとするがそんなの構わず、アキに怒りを言葉でぶつける。
風春 鈴
なんで空牙がそんなことするの!?空牙が自分から消えたっていうの!?アキは...あんたは空牙が居なくなっても何も感じ無い訳!?
その言葉でアキの中の何かが切れた。アキは、低い声で短く
和雲 秋
あ?
と言ってから、私の胸ぐらを掴み返してきた。
和雲 秋
そんな訳無いだろ!?俺だって...俺だって、ナツが自分から消えたなんて思いたくない!!!
和雲 秋
それに‼︎空牙が居なくなって何も感じ無い訳ない‼︎今だって心配だよ!!何処で何してるか心配だよ!!居ないってことも嘘だって!悪い夢だって信じたいよ‼︎
アキの目には涙が溜まっていた。掴んでいる手の力も徐々に弱くなっていく。
和雲 秋
でも...でも...これが争った跡じゃ無いのは確実なんだよ......
アキは、掴んでいた手を力無く下ろして、下を向く。
風春 鈴
......なんでそう言い切れるの...?
アキはゆっくりと顔を上げた。
和雲 秋
刑事の勘
風春 鈴
ふざけんな!
和雲 秋
嘘、嘘
風春 鈴
ふざけないでちゃんと話して
和雲 秋
は、はい...
アキはそこから、争った跡では無いと言う理由を話し始めた。
和雲 秋
この部屋に置いてある思い出の物....主にハルとの思い出の物が1つも壊されていない
風春 鈴
でも、たまたまの可能性だって...
和雲 秋
周りの物は、壊されていても、お前との思い出の物は壊されていない。可笑しくないか?
風春 鈴
言われてみれば...ってだけだけど
あまり説得力が無いなと思っていたら、今まで黙っていた冬香が口を開いた。
晴風 冬香
散らばっていた資料の中に「捜さないでほしい」と書いた跡のある紙が混じっていました。そして、この家に来た時この部屋以外は荒らされて居なかった。玄関も綺麗でした
晴風 冬香
そういった点から、これは夏巳君が自分で行った事ではないかと私と秋君は思ったんです
風春 鈴
......そっか
和雲 秋
それに鑑識を呼んだから、もしこれが別の人間がしたことなら、何か証拠が残っているはずだ。近所に聞き込みもすれば、怪しい人物を見かけている人がいるかもしれないしな
アキと冬香の説明で情報の整理も出来てきて、気持ちも落ち着いてきた。
風春 鈴
......アキ
和雲 秋
なんだ?
風春 鈴
ごめん!
少し驚いてからアキは、落ち着いた声で
和雲 秋
さっきのことなら、別に良い。俺もやり返したし
と、笑って許してくれた。冬香もいつもの笑顔でこちらを見つめている。
風春 鈴
2人共....ありがとう!
和雲 秋
う、うん...?
晴風 冬香
何がですか?
2人共キョトンとしていたが、その光景も今は安心できるものだった。