高校3年生の時、空に向かって枝いっぱいに緑の葉を生い茂らせた大樹の下でタイムカプセルを埋めた。幼馴染の4人で。
そして約束した年から10年が経った____
私、風春 鈴。28歳の普通の会社員です!...って、そんなこと言ってる場合じゃないくて!!
私、風春鈴は、只今二日酔いで会社に遅刻しかけています。
全速力で会社への道のりを走る。体力には自信があるから、疲れることはないが...。
横断歩道前に着いた途端、信号は赤に変わったから、直ぐには青にならない。そして、この信号は変わるまでの時間がとても長い。
道行く人から見たら真顔だが、心の中では、後悔と遅刻することへの恐怖がぐるぐる回っている。
そんなことを考えながら、携帯で時間と今日の予定を確認する。
予定を確認している時にある用事に目が止まる。
今日は、7月1日。幼馴染の私含めた4人と約束した日が1ヶ月後に迫っていた。と言っても、幼馴染の3人の内の2人とは、連絡を取っていてよく誰かの家やどこか個室のある店で集まっている。残りの1人とは、4年程前から連絡が取れずにいる。
いつの間にか信号は青に変わっていて、周りの人達は歩き始めている。私も会社に遅刻する訳にはいかないので、携帯をしまい横断歩道を歩き始めた。
スッ
何だか懐かしい気配を感じ後ろを振り返るが、気配の主らしき人物は見当たらなかった。
頭の中に浮かんだ1つの考えを消して、再び歩き出す。誰かがこちらを見ていたことにも気づかずに。
結局、会社には10分の遅刻をしてしまい、部長に怒られてしまった。その後の仕事でも、普段しないようなミスを連発。流石に相手企業との取り引きや接待では、ミスをする訳にはいかないので、ミスをなるべくおかさないように頑張り、こけかけるというものだけで済んだ。
あっという間に定時になった。少し仕事は残っていたが、今日はどうしても遅れられない用事があるので、残業をせずに帰る。先輩に残りの仕事はどうするのかと聞かれたが、家でしますと言い、無事帰れた。
どうしても遅れられない用事。それは、幼馴染の2人と会う日。今は、今日の集合場所である店に送られて来た地図を見ながら、向かっている。
店の前に着き、目の前の高そうな店を見つめた。
しばらく見つめてから、店の中に入る。あのまま外でずっと店に入らず見つめてたら、変な人だし、待ってくれてる2人にも悪いからね。
店の人に伝えると、名簿を確認してから、直ぐに個室に案内してくれた。部屋には既に2人は待っているらしい。靴を脱ぎ、目の前のふすまを開ける。
綺麗な白いワンピースを着た幼馴染の1人であり、私の親友の晴風 冬香が、笑顔で言ってくれる。冬香は、日本の経済を支えているとも言える家の会社を継ぎ、今やその会社の社長にまでなっている。
そして、冬香の前の席に座り、こちらを見て笑っているもう1人の幼馴染、和雲 秋。私とアキは、よく喧嘩して周りに怒られていた。しかし、アキは今や警視庁の刑事になり、様々な事件を解決しているらしい。
ちなみにアキというのは、下の名前の漢字が季節の"秋"という字だから、周りの人の大体がそう呼んでいる。そして、私は"春"が入っているから、ハル。冬香は、"冬"が入っているから、フユと呼ばれることがあるが、冬香の場合は名字や名前呼びの方が多いかな。最後の1人には、"夏"が入っているから、ナツと呼ばれている。
アキに文句を言いながら、冬香の隣に座った。
ご飯に関しては、いつも通り先に来た冬香かアキが注文しているだろうと思い、メニューは開かずに本題に入ろうとする。
くくり直すのもめんどくさいので、1つにまとめていた髪を解き、髪を下ろした状態にする。
そして、アキは机の上に何枚かの資料を広げ始めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。