廊下を1人歩きながら考える。暁くんを呼び出してみようか、いや呼び出す手段がない。ならば靴箱に入れておくか、いや他の人には見つかりたくない。いっそのこと暁くんには渡さず愛海には嘘をつこうか、それは…ダメだ。
外からは運動部の声が聞こえ始めた。暁くんもサッカー部に行ったのだろうか。
すれ違った他クラスの人達がそんな会話をしながら通り過ぎて行った。彼氏に渡した人、片思いの相手に渡した人、渡したくても渡せなかった人、色んな人がいるんだと改めて思う。それなら自分はどうなのか。作ってきているのに渡せない人も中にはいたのかもしれない。ならば私もその仲間に入ればいいのではないか。
『人はみんな違うし、同じじゃつまんないよ。』
暁くんの言葉が脳裏に蘇る。
私は歩く足を早めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。