第11話

古書室
69
2018/02/17 09:58
橘 優羽 タチバナユウ
失礼しま…
???
わっ!!!
橘 優羽 タチバナユウ
えっ⁉︎
埃っぽい古書室の狭い本棚の間に立っていたのはー

暁 陽太だった。
暁 陽太 アカツキヨウタ
えっと…橘さんだよね?
橘 優羽 タチバナユウ
え…
「橘さんだよね?」
私は一瞬誰に対して質問しているのか分からなかった。私はクラスの人達とほとんど関わらないため暁 陽太が私を知っているとは思わなかったのだ。
暁 陽太 アカツキヨウタ
あれ?違った?
橘 優羽 タチバナユウ
ううん!違くない。
慌てて答えた。
暁 陽太 アカツキヨウタ
よかった。
暁 陽太はホッとした表情をした。その表情になんとなく胸が高鳴る。
暁 陽太 アカツキヨウタ
古書室に何かよう?
橘 優羽 タチバナユウ
あっ、あの、本…返したくて。
私は動揺していた。興味を持った相手だとこんなにも動揺してしまうとは思わなかった。
暁 陽太 アカツキヨウタ
そうなの⁉︎ごめん、気づかなくて。
橘 優羽 タチバナユウ
ううん…あの…古書室で何してたの?
私は質問してみた。
暁 陽太 アカツキヨウタ
古書整理。ほんとは放課後部活なんだけど…俺、図書委員だから。
本棚に収まる古書を見ながら暁 陽太は言った。
橘 優羽 タチバナユウ
偉いね。サッカー、好きなんでしょ?古書整理なんて永遠に終わらない気がするし、部活行った方がいいんじゃないの?
正直な気持ちだった。嫌な奴だと思われても仕方のない発言だったと思う。しかし暁 陽太は笑っていた。
暁 陽太 アカツキヨウタ
うん。でも図書委員は俺だし、自分の責任はきちんと果たしたいんだ。
橘 優羽 タチバナユウ
そう…なんだ。
話している間も笑った表情を崩さない暁 陽太を私は尊敬する。そしてまっすぐなその性格も。
橘 優羽 タチバナユウ
すごいね。私にはできないや。
少し自虐的に言ってみたものの恥ずかしくてならなかった。
暁 陽太 アカツキヨウタ
いいんじゃない?
橘 優羽 タチバナユウ
えっ?
暁 陽太 アカツキヨウタ
人はみんな違うし、同じじゃつまんないよ。自分が出来ないことを周りに助けてもらえるから嬉しいわけだし。
こんな人、初めてだ。

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