不意に、おどおどしながら聞いてきた。
そのことを聞いて安堵した。
お風呂から上がって、布団に入った。
さっきまでの緊張感は無くなっていて、幸福感に包まれた。
しばらくぶりに気持ちの良い眠気が来た。
もしかしたらまた、あの夢を見るんじゃないか。夢じゃなく、現実で起こるんじゃないか。そんな不安で清春の手が震えていた。
もちろん小太郎のことを信じている。信用していないわけじゃない。
けど、不安が拭いきれなかった。
強く手を握って目を瞑った。
1回……、2回……、3回……
呼吸を繰り返しているうちに眠りについた。
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昨夜は驚くほど夢を見なかった。
今朝は自然に起きた。
前までは、悪夢に魘されて目が覚めていた。
握ったままの手と小太郎の寝顔を見て安心した。
眠っている小太郎にカメラを向けた。
カシャっというシャッター音とともに小太郎の目がゆっくりと開いた。
虚ろな目でこちらを見つめてくる。
心の中で額の汗を拭った。
バレると小太郎のことだから絶対消してって言うだろう。
急に尋ねてきた。
前髪を手でクシャクシャっととかした。
小太郎が照れ隠しする時の癖。
穏やかな心地いい空気が流れている。
前にあった嫌なことを全て忘れられそうだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。