弱々しい声で清春の名前を呼んだ。
安心して肩の力が一気に抜けた。
小太郎が謝り始めた。
謝る分だけ涙が増えていった。
小太郎の華奢な背中を優しくさすった。
ボロボロと涙を流しながら謝る小太郎。
「忘れててごめんなさい」
間違いなくそう言った。
頭の中が真っ白になった。
信じ難いことが起きている。
申し訳なさそうにゆっくり控えめにコクンと頷いた。
小太郎はひたすら泣きじゃくった。
清春のことを完全に思い出している。
瞬間、不安げに震える小太郎を抱きしめた。
小太郎が自分の元にやっと戻ってきた。
こうして腕の中にいる幸せを噛み締めた。
身体を離し小太郎に顔を向けた。
すると、小太郎の可愛い顔が近づき、一瞬で唇を奪われた。
恥ずかしそうにはにかんだその幸せで満ち溢れた笑顔を、二度と手放さないと心に誓った。
ずっと小太郎にそう伝えたかった。
互いの涙が肩を濡らした。
早朝の光がさす、静かな部屋で2人は泣いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。