第16話

休めない都市伝説調査クラブの休日
61
2021/08/01 15:13
7月17日、土曜日。
この日、都市伝説調査クラブの、芽衣を除いた5人が集まっていた。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…芽衣は?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
こないだのテストで90点取れなかったから勉強だとさ。活動にも行っちゃダメって言われたらしい
八雲 アラ
八雲 アラ
確実に全部80点以上やろ?くそ点数いいやん
5教科合計…最低でも400点やん
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
な。そこまで怒らんくてもって思うくらいキレてたで
来栖 白夜
来栖 白夜
そういやあのテスト、リーナ合計で何点やったん?
ユーノから本気でやれって言われたから本気でやったとか言ってたけど
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
500。
蓬莱 華風
蓬莱 華風
全教科満点がここにいた〜。
それ、お母さんとかに褒められたやろ?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
いや?何言っとんの
その場にいる全員が、「え?」という顔で璃那を見た。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
お義父さん達が俺の5教科100点満点の解答用紙見て言ったことなんて、「早く下げろ、お前の解答用紙を見てると芽衣に殺意が湧く」やぞ
ほんッッッと俺に興味無いのを隠す気ないよな
その言葉を聞いた途端、全員が絶句した。
華風や白夜に至っては、ぽかーんと口を開けて璃那を見ていた。
八雲 アラ
八雲 アラ
……いや、あの、マジ?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
おん。マジ。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…もしかして、リーナがテストでいい点とらんのって…
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……頑張って満点とってもさぁ…褒めてくれる人がいないとやる気失せるやん?
その言葉を聞いた瞬間、華風は思いついたかのように笑った。
蓬莱 華風
蓬莱 華風
…りーなぁぁあ!!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
んぇッッ?!なに?!
華風が、後ろから璃那に抱きついて、頭をわしゃわしゃと撫で始めた。
その華風の行動から他の3人も華風がやろうとしていることを察し、全員で璃那を囲んで抱きつくような形になった。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
は、ちょ、何?!
蓬莱 華風
蓬莱 華風
リーナの親御さんがリーナを褒めんのやったら、その分わいがいっっっぱい褒める!!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
は、はぁ……?
よしよし、と言いながら華風は璃那の頭を撫でていた。
撫でられている当の本人の璃那は、少し唖然とした後、「ふはッッ‪w」と吹き出した。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
ふ、ふふッッ…‪wなんやねん、それ…ッッ‪w‪w
八雲 アラ
八雲 アラ
あ、リーナが笑った
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
そら笑うわ、こんなことされたら‪w
来栖 白夜
来栖 白夜
あれやな、ここ最近で上位に食い込むくらい嬉しそうな笑顔やぞ
彼方 侑乃
彼方 侑乃
ふ、確かに‪w
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……あ、てか、こんなことしてる場合やないわ
そういうと璃那は、抱きついている4人を押しのけて離させる。
八雲 アラ
八雲 アラ
そういや、今日はなんで集めたん?みんな暇やったからよかったけど
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
え?ただ遊びに行きたいだけよ
来栖 白夜
来栖 白夜
…あ、そういうこと?
彼方 侑乃
彼方 侑乃
依頼かなんかについてかと思ったやん…違うんか
そういうこと、と納得したように璃那以外の4人は頷いた。
蓬莱 華風
蓬莱 華風
遊び行くんー?どこ行く?ゲーセン?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
いやぁ?買い物。服とか買いに行きてぇなーって思って
まぁゲーセン行きたいなら行くで?
八雲 アラ
八雲 アラ
えぇ……俺財布持ってきてへんねんけど
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
どうせ俺に強請るやろ、知ってんねんぞ
八雲 アラ
八雲 アラ
バレたぁ‪w
そうして5人は、まずショッピングモールに行こうと、歩き始めた。
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数十分後、ショッピングモールにて
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
ん〜…俺ってどんな服が合うんやろ…基本制服しか来てへんから分からん…
彼方 侑乃
彼方 侑乃
小さい頃はワンピースとか着とったやん。
今でも意外と合うんやない?大人っぽいやつとか
蓬莱 華風
蓬莱 華風
リーナって意外となんでも合いそうよなぁ…
あ、でも、ジーパンとか着てるイメージ湧かんかも
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
…ワンピースとかスカートの方が動きやすいんよな、こういうのとか
そう言って璃那が手に取ったのは、白い無地のワンピース。
璃那が無地のワンピースを選んだことに2人は驚いたようだった。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
まぁ……合うとは思うけど、それ選ぶとは思ってなかったわ
蓬莱 華風
蓬莱 華風
リーナが白のワンピース選ぶって、ちょっと意外〜
彼方 侑乃
彼方 侑乃
いや、それもそうなんやが…
そう言って侑乃は、そのワンピースの上の方を見た。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…ノースリーブ……選ぶとは思ってなかった
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
…あぁ…そっか、ノースリーブやとなぁ…
ワンピースを見ながら悩んだように璃那はそう言って、ワンピースを戻した。
蓬莱 華風
蓬莱 華風
え?戻しちゃうの?試着ぐらいしてみればええのに
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
まぁ、長袖の上着でも見つけたら試着しよかな
蓬莱 華風
蓬莱 華風
?そっか
結局その後、気に入ったものは見つからず、璃那は諦めたように「もういいや」と言った。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…上着くらいならカーディガンとかで十分じゃね?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
持ってないんよなぁ…
彼方 侑乃
彼方 侑乃
あぁ…今の時期長袖なんて売ってないしな
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
そうそう。作んのが1番早いかぁ…
そう言いながら3人は服屋さんを出て、服屋の前で待っていたアラと白夜と合流した。
八雲 アラ
八雲 アラ
…あれ?なんも買わんかったん?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
うん、今の季節長袖とかなかったからさぁ…
八雲 アラ
八雲 アラ
あーねぇ
そんな会話をして、結局のところゲーセンに行った6人は、5時半まで楽しんだ。

そして、その帰り道。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
いやぁ、楽しかったな〜
彼方 侑乃
彼方 侑乃
お目当ての服は買えんかったのにええの?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
ええよ、いつか買う
彼方 侑乃
彼方 侑乃
そかぁ…
そう言いながら、マンションの横を歩いていると、上から悲鳴が聞こえてきた。

「避けて、避けてーーッッ!!」と。
侑乃が不思議そうに上を見ると、なにかが落ちてきていた。

茶色い何か。…植木鉢だった。
あれは。あれが落ちてきたら、璃那に当たる。
でも、璃那は気づいてない。立ち止まって芽衣に連絡してるようだった。

ただし、侑乃が助けに入るには、時間が無い。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
璃那!!避けろ!!
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
えッッ…?!
璃那は上から降ってくる植木鉢を確かに見た。でも、璃那は動こうとしなかった。
恐怖で動けなかったのだ。
璃那はしゃがんで頭を抱えた。
するとその時。
────パシンッッ!!
なにかが、勢いをつけて飛んで、植木鉢を弾いたのを、璃那以外の4人は見た。
黒いなにか…男の子のように見えるその何か。
???
………よかった
”それ”は、璃那を見てそう呟いたあと、侑乃達の方を向いた。
その少年は真っ黒だが、目だけがオレンジ色で……

どことなく、侑乃に似ていた。
???
……馬鹿。
助けてやれば、良かったのに
”それ”は、少し目を細めて、侑乃を睨んでいるようだった。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…え、えっ?俺?
???
…そう。お前。
八雲 アラ
八雲 アラ
え?ユーノ達にも声聞こえる…?俺じゃなくても声聞こえるなんて、初めてや……
アラが驚くのも当然だった。普段は霊の声なんて、自分以外には聞こえていないのに、当然のように話しているから。
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
…ユーノ?
彼方 侑乃
彼方 侑乃
ど、どした?
???
なに…?
その黒い霊と、侑乃が同時に反応した。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
え、は??どゆこと…?
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
…助けてくれてありがと、もういいよ
璃那は、黒い霊にそう言った。
すると黒い霊はにこっと笑って消えていった。
彼方 侑乃
彼方 侑乃
…な、なぁ、リーナ……?
今の……
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……はぁ…怖かったぁ…
はよ帰ろうや
蓬莱 華風
蓬莱 華風
え、い、いや、でも───
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……あれは俺の友達、侑乃って言うんよ
来栖 白夜
来栖 白夜
…え、侑乃って…
その場がシーン…と静まり返る。
すると璃那は立ち上がって、
黄蘗 璃那
黄蘗 璃那
……それだけ。
低い声でそう呟いて、先を歩いて行った。そんな璃那の後ろ姿に黒い霊が5人憑いているのを、侑乃達は見た。
蓬莱 華風
蓬莱 華風
な、なぁ、リーナ…
華風が璃那に声をかけると、璃那……ではなく、その黒い霊たちが振り返った。

どことなく、自分たちに似ている霊を見て、4人は恐怖を感じていたのだった。

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