第11話

ライバルが可愛すぎる件。
3,372
2021/11/29 04:00
(なまえ)
あなた
ケントくん、私が特別って、……どういうこと?
胸の音がうるさすぎて、自分の声と重なる。
ケント
ケント
ああ、特別
ケント
ケント
予言の魔力の持ち主なんて、誰にとっても特別だよ
(なまえ)
あなた
……
(なまえ)
あなた
(そんなことだろうなって、なんとなく分かってた……)
ケロッと答えるケントくんの顔を見て、ガクッとこうべを垂れる。
リリーユ
リリーユ
ぷっ、ウケる
(なまえ)
あなた
(笑われた)
ケント
ケント
アイリスを助けるためには、あなたの力が絶対に必要だからさ
(なまえ)
あなた
うん、そうだね……
(なまえ)
あなた
(やっぱり今日も、ケントくんはアイリス至上主義なんだ)
休憩時間、私は廊下に出て、窓から外を眺めていた。
(なまえ)
あなた
(ファンタジーの学園生活って、もっと現実離れしたものを想像してたけど、案外普通だなぁ)
(なまえ)
あなた
(基本的には、授業以外で魔法は使わないものらしいし、そりゃそうか)
現実世界の学校生活と違うところといえば、校舎がすごく豪華で、
椅子や机も、やたらときらびやかなところくらい。
開けっ放しになった教室の扉から、中を見る。
ケントくんが、クラスメイトの男子とふざけあっている。
(なまえ)
あなた
(あ、フランもそばにいる)
(なまえ)
あなた
(ふたりの周り、人でいっぱい……)
(なまえ)
あなた
(漫画では描かれなかったところも見られるなんて、変な感じ)
(なまえ)
あなた
(ケントくんって、休憩時間とかでも、真面目に予習復習しているイメージがあったんだけどな)
一緒にいると、少しずつ彼の印象が変わっていく。
漫画を読んだだけの時には、ケントくんは真面目で紳士的で、強い。

どこか闇を抱えていて、周りの同年代の男子とは何もかもが違う。

王子様みたいな……、そんな人だと思っていたのに。
(なまえ)
あなた
(でも……)
子どもみたいにはしゃぐ姿を見ると、まるで違う人みたい。
(なまえ)
あなた
(本当のケントくんは、何も特別じゃない)
(なまえ)
あなた
(普通の、ひとりの男の子)
リリーユ
リリーユ
ねえ
(なまえ)
あなた
っ!?
脇から声をかけられて、飛び上がる。
完全に視界外だったから、驚いた。
(なまえ)
あなた
あ、り、リリーユ……さん?
リリーユ
リリーユ
あんた、ケントとどういう関係なの?
(なまえ)
あなた
リリーユ
リリーユ
突然出てきて、なんなの?
(なまえ)
あなた
あの
リリーユ
リリーユ
ちょっと可愛いからって、調子乗らないで
(なまえ)
あなた
いや、その
リリーユ
リリーユ
リリーユの方が、ずっとずっと可愛いんだからね!
(なまえ)
あなた
それは、はい
リリーユ
リリーユ
素直ね! いいことだわ
(なまえ)
あなた
は、はあ……
勢いに圧されて、まともに言葉を返せない。
リリーユ
リリーユ
アイリスがひとりいるだけで邪魔だったのに、もうひとり増えるなんて
(なまえ)
あなた
(本当に、ケントくんのことが大好きなんだな)
漫画のリリーユは、アイリスを邪魔だと言いながらも、ふたりの仲を裂くのに卑怯な手は一度も使わなかった。
(なまえ)
あなた
本当に、可愛い……
リリーユ
リリーユ
は?
(なまえ)
あなた
あっ
(なまえ)
あなた
ご、ごめんなさい、リリーユさん、すごく可愛いなって思って
リリーユ
リリーユ
は、はあ!? リリーユ、そんなこと言われ慣れてるんだけど!?
リリーユ
リリーユ
顔だけ可愛くて、どうせ性格は最悪って思ってるんでしょ!?
(なまえ)
あなた
まさか。だって、リリーユさんは、アイリスさんがいなくなった方が自分にとって有利なはずなのに、ケントくんたちと一緒に彼女を助けようとするから
(なまえ)
あなた
正々堂々としていて、素敵です

プリ小説オーディオドラマ