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2021/09/20

第1話

推しにリアコすぎて、転生したい件。
──私の好きな人は、一生触れられない場所にいる。
わたし
わたし
はあ、かっこいい……
自分が通う高校の最寄り駅まで、スマホを片手に歩く。
その画面に映し出されるのは、『ヴァンパイアゲーム』という少年漫画の、主人公。

ケントくん。
魔法が当たり前に存在する世界で、人間とヴァンパイアとのバトルを描くファンタジー。

三年前に少年誌で連載が始まり、現在アニメも絶賛放送中の人気作。
その漫画の主人公が、私の一番好きな人。
わたし
わたし
『ケントくん本当にかっこいい』
わたし
わたし
『大好き』
わたし
わたし
『今から行く学校が魔法学園で、ケントくんがいたらテンション上がるのに』
わたし
わたし
『私のパートナーはもちろんケントくん』
SNSの非公開アカウントで、いつものように自分の妄想を呟く。
フォロワーは0人。

いわゆる、壁打ち。

だから、思う存分に好きなことを書きつらねられる。
わたし
わたし
『あっちの世界での私は、予言者』
わたし
わたし
『髪の毛はピンクでふわふわ、碧眼へきがん
わたし
わたし
『ずっとケントくんの隣にいるの』
スマホから目を離して、ため息をひとつ。
私はいわゆる、『夢女子』と呼ばれる部類に入る。
好きな作品の世界の中に、自分や、もしくは自分が考えたオリジナルのキャラを登場させて、楽しんでいる。
でも、このことは、誰にも言えない。
わたし
わたし
……
去年、中三の時。

昼休み、友達との他愛もない雑談から、それは始まった。
中学時代の友達
好きな人いる? あたしね、隣のクラスの進藤くん、かっこいいなって思ってて
中学時代の友達②
イケメンだもんね~。まあ、私はスターズのアツシだけど
中学時代の友達
それアイドルじゃん
中学時代の友達②
アツシは、私の彼氏だもーん。同担拒否だから
中学時代の友達
はいはい
中学時代の友達
あんたは?
わたし
わたし
私は、ケントくんかな。『ヴァンパイアゲーム』の主人公の
わたし
わたし
大好きなんだ。彼女になりたいなぁ
中学時代の友達
え……
中学時代の友達②
あ、はは……、そういう冗談いいから。ごまかさないで、教えてよ
わたし
わたし
え? 冗談じゃなくて、私、本当に……
本気で好きだった。
紙の上の彼に、恋をしていた。
同級生やアイドルのことを好きだという彼女たちと、私の『好き』に違いはないはずだった。
中学時代の友達
マジ? ……ちょっと引くんだけど
中学時代の友達②
漫画のキャラとか……、ねえ? だって、あれって二次元じゃん……
返ってきたものは、引きつった顔。
信じられないものを見るような、瞳。
だからきっと、おかしいのは私の方だったのだと思う。
あれ以来、誰にも打ち明けていない。
高校は、知り合いのいない遠くの学校を選んだ。
心を開くのが怖くて、上辺うわべだけで人に接するようになった。
自分が投稿した、SNS上の呟きを見る。
わたし
わたし
こっちが本当ならよかったのに
歩行者用の信号が青に変わる。
横断歩道を渡る。
耳を貫く、車のブレーキ音。
わたし
わたし
え?
視界に、こちらに向かうトラックの姿をとらえた時には、もう遅かった。
???
???
トラックが……!
次の瞬間、目を覚ました。
最後の記憶は、目の前に迫ったトラック。
???
???
……生きてる?
目の前に、手のひらをかかげる。
ぺたぺたと、自分の体を触って確かめる。
感覚がある。
???
???
い、生きてるー……!
半泣きになりながら、自分の体を抱きしめて、生きていることを実感する。
喜びを噛み締めていると、サラッと顔にかかる長い髪に気がついた。
???
???
(なに? この色──)
ケント
ケント
危ない!
???
???
──っ!?
突然グイッと手を引かれて、強制的に全速力で走らされる。
誰かが追いかけてくるような足音も聞こえるけれど、後ろを振り返るような余裕はない。
やがて、追ってくる人物は、私たちを見失ったようで、ようやく止まることを許された。
ケント
ケント
大丈夫か!? 何考えてるんだ、女がひとりで出歩くなんて! ヴァンパイアにさらわれるところだっただろ!?
そこには、ありえない姿があった。
???
???
……ケントくん?