小さなアパートの廊下にぽつり取り残された。
すぐ戻るって言ってたけど、化粧でぐちゃぐちゃになった顔なんてもう見せたくない。
初対面だし、待ってる義理もないよね…。
こっそり自分の部屋行っちゃおう。
ガチャッ!
目の前で勢いよく開いた扉に驚く。
何故か、ものすごく申し訳なさそうな顔をしてるから自然と笑みが溢れる。
当たってないから全然気にしてないのに。
これ!
と言って差し出された男性の手にはお皿があった。
突然のことに戸惑いながら、私は男性とお皿を交互に見る。
ラップがかけられたお皿にはカルボナーラが乗っていた。
そう言って、もう一度お皿を私に近づける。
この男性は初対面の私になぜご飯を分け与えているのか、ただただ不思議だった。
要らなかったら捨ててもらっていいので!
そう言い残して男性は自室に戻ってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。