しばらくぶりに顔を上げた目の前の隣人は、何故か今まで見た中でいちばんの笑顔だった。
笑顔の多い人だな、とは思っていたけどこれはズルい。
思わず心の声が漏れちゃったじゃんか。
聞こえてないだろうか。
そう言いながら胸の前でガッツポーズをする彼は少年のようだった。
さっき漏れた言葉は届いてなかったらしくほっとする。
なんかサラッと、疲れたら俺の家来てって言った?
数分前、少年のようだった彼はどこに行った。
変なこと言ったと思ったのだろうか、ボリュームが下げられた最後の言葉に笑う。
行くつもりなんて全くないけど、この人には落ち込んだ顔は似合わないよ。
…なんて、まだ2回しか会ってないのにそんな風に思ってしまった。
途端、笑顔になった彼は
じゃあ、これありがとう!
と紙袋を揺らして部屋の中に戻ってしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。