お風呂が終わり、
先ほどのリビングに戻ると、
彼はギターを弾いていた。
とても心地よい音色を響かせる彼の元へ、
そっと近づく。
「、、、お先しました。」
「ん、おかえり。」
ギターをソファの横に立て掛けながら、
こちらを見上げる。
「俺もシャワーだけ浴びてくる。
髪、乾かしとけよ。」
既に、リビングにはドライヤーの
コンセントが繋いであった。
「至れり尽くせりだね。」
「たまには俺もやるんだよ。」
いたずらな笑みを浮かべ、
お風呂場へと向かう彼。
些細な行動一つでも、
魅力的な彼は、とてもズルい。
ドライヤーを手に取り、
彼が帰ってくるまでに、と急いで乾かす。
雨で濡れたのが上着だけでよかった。
ただ、着替えに、と借りたシャツは
肩からずり落ちそうだし、
ズボンの紐はリボン結びをしないと
脱げてしまいそうだ。
まだ外はゴロゴロと雷が鳴っている。
早く上がって来ないかなぁ。
とソワソワし出した頃、
彼が廊下の奥から現れた。
「わ、ユンギくん、、、」
「何、照れてんの?」
「だ、だって!」
そこにはTシャツを忘れたらしく、
心臓に悪い上半身裸の彼が。
「はは、顔真っ赤。」
面白そうに笑う彼。
意地悪だ。
「風邪引くから、早く着てください、、、」
顔は火が出るくらい熱くて、
きっと彼が言うように真っ赤なのだろう。
「、、、何?誘ってんの?」
彼の目が私を捉えた。
「違っ、くて、、、」
「シャツ、、、肌蹴させてよく言うな。」
「!!」
急いで服を直そうとしても、
彼に掴まれた手によってもうどうする術も無い。
「きゃ、、、っ」
ヒョイ、と簡単に持ち上げられ
寝室まで運ばれる。
「連れて帰ってきて良かった。」
そう言って私を見つめる彼の目は、
私を見つめて離さなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。