第2話

02.ゆんぎ②
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2021/04/22 13:42
次に会ったのは雨の日だった。



「こんばんは、また会えましたね。」

彼を見るなり、無意識に頬が緩む。


「お前も好きなのな。」

はは、と低く笑う声が聞こえる。

彼の乾いたような笑い声は独特で、好きだ。



彼は横にあった椅子を少し自分の方に寄せ、
こっち、とわたしを座らせる。

椅子に座りながら、彼を見る。

「ユンギくんには言われたくないです!」


あれから、彼に会わなかったものの、
私は何度かここのバーに来ていた。


今日も、いつも通りマスターに
赤ワインをお願いする。



「お前、肩とか濡れてんじゃん。
雨止んでねぇの?」

拭くもんねぇな、と言いながらも
おしぼりを渡してくれる彼。


「ありがとうございます。」

おしぼりを受取り、軽く抑えるように拭く。



今日は、午後15時頃から雨で、
明け方まで続く予報。

外は、ザァッと音を立てて雨が降り続いていた。

「わたし、ユンギくんに会いたくて来てたんです。」

「、、、」

グラスを片手に一瞬、止まる彼。


「あの、気持ち悪いですよね。
気にしないで、、、!!」

冗談、と笑いながら誤魔化す。

今日はお酒がまわるのが早い。
きっと彼に会えて、テンションが
上がってしまっている。


彼が、少し深呼吸をして、
ゆっくりと息を吐いた。

「や、寧ろ、嬉しーよ。」

「え、、、」

「ただ、ちょい、恥ずかしい。慣れてねぇ。」

彼は自分の、クリーム色の髪をくしゃくしゃと掻く。


ふ、と思わず笑みが溢れる。

「照れてるんですか?」

「うるせー」

そっぽを向く彼の耳は紅くなっていた。



お会計を済ませ、外に出るとタイミングよく、
稲光の少し後に、ドォォン!と、雷の大きな音。


「!!」

思わず、声も出せずにその場に座り込む。


「さっきの余裕は何処だよ。」

彼は、そう言いながら、
私の横にしゃがみ込む。


「びっくりした、、、」
来た時、雷なんて鳴ってなかったのに、、、」

半ベソをかいた目で彼を見つめる。

「あのさ、そんなに、、、怖いなら」

酷く、いつもより歯切れの悪い彼。


暫くじっと見つめると、
彼の目が私を捉えた。

「家、来いよ。近いから、、、」

視線はすぐに外される。


「、、、うん」

彼に言われるまま、頷く。


彼は二人分の傘をさすと、
ゆっくりと、私を立たせ
手を引いてくれた。

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