第16話

12.ゆんぎ①
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2021/05/18 11:00



「ねぇ、、、ゆんぎ」

肌を隠すように布団を寄せ、
上半身だけ裸の背中を、見つめる。



「何」

行為が終わった後、彼は余韻にも浸らず、
スマホを片手に、窓際でたばこを吸っている。



私達は、付き合ってない。
会社では、先輩と後輩。

プライベートでは、身体だけの関係。

そんな関係が、もう2年ほど続いている。



そんな関係に終止符を打とう。

そう思いながらも、
なかなか言い出せない私を促すように、
カーテンが夜風で、ゆらゆらと揺れる。





「ゆんぎ、あのさ、、、



私達もう、終わりにしよう。」

ぴく、と彼の眉がひそめられるのが分かった。





ーーー2年前。



わたしがゆんぎと初めて話したのは、
会社の飲み会。



「あなたちゃんも飲みなよ。
ねぇ、彼氏いないの?」

「や、今は良いかなって、はは」

「えー、俺立候補しちゃおうかな〜!」



(お酒臭い、、、)

酔った勢いで、迫ってくる
好みでも無い男の人。

太ももに手を置かれ、
気持ち悪いながらも上司だから、
と抵抗ができない。



(最悪、、、端にいなきゃ良かった。)

自分の座った場所を恨んだ。



「ねぇ、あなたちゃん、、、」

気味の悪い笑みを浮かべ、
太ももをさすられる。

「、、、ッ。」
(誰か、、、お願い。助けて、、、)



ぎゅぅ、と目を瞑ると、
頭上から低く、少し掠れた声。

「なぁ、それセクハラだろ。
辞めろよ。嫌がってんだろ。」


「なんだ、っミンじゃないか、、、!
セクハラなんて、人聞きの悪い、はははっ」

先程までの上司の余裕は何処へやら。
しどろもどろになりながら、
グラスを片手に逃げ出す。



「チッ」

「あの、、、助けてくれたの?」

「、、、気持ち悪くて見てらんねぇんだよ。
お前も嫌なら抵抗しろ。」

「っ、、、」

(それができなかったから
大人しくしていたのに、、、)

じわ、と目頭が熱くなる。

(ダメだ、泣きそう、、、)



「おい、、、泣くなよ。」

彼は面倒臭そうな顔をして、

はぁ、とため息を吐くと、隣に座った。



「なん、で、、、」

「こういう場は苦手なんだよ。
それに、、、また変なのが隣に
来るかもしれねーだろうが。」

無愛想な彼は、グラスを片手に、
壁に寄りかかってお酒を飲んでいた。

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