第3話

03.ゆんぎ③
596
2021/04/25 14:19



止むことを知らないように、雨は
降り続いている。


2分ほど走った先にあるマンションに着き、
エントランスを抜け、部屋まで進む。


幸い、彼の家に着くまでに
雷が鳴ることは無かった。


「ユンギくん、手、ありがとう」

「ん。」

繋いだ手は、傘をたたむ為に、するりと自然に離れる。


彼は、手を繋ぐ代わりに、
歩幅を合わせるようにして私の横を歩く。



「家着いたらすぐ、なんか
用意するから座ってろ」

「うん」


エレベーターに乗り込み、
彼の階のボタンを押す。

彼はただでさえ高そうなマンションの
最上階に住んでいるらしい。



「お邪魔します」

「適当に座ってて、ココアでいい?」

「うん、お願いします。」

広々としたソファの真ん中に
ちょこん、と腰掛ける。


「熱いからな」

彼が作ったココアを
落とさないように、両手で持つ。


「冷まして飲めよ」

彼は私の横に腰掛け、
ふぅ、と冷ましながら少しずつ口に含む。

「うん、いただきます。」

彼が渡してくれたマグカップの柄は
可愛い猫だった。


マグカップを眺めながら、ぽつりと言葉が漏れる。

「ユンギくんにそっくり」

「それくれた、友達にも言われた」

お互い見つめ合い、はは と笑う。


ココアの温かさがじんわりと身体に広がる。

「あなた、雨で濡れてるから、
それ飲んだら風呂入ってこいよ。」

「え?!大丈夫!濡れたままでも!!」

「ばか、風邪引くぞ」


彼は自分の真っ黒のマグカップを置いて、
バスタオルを取りに行く。

そして、空になった
私のマグカップと引き換えに手元に渡される。

「じゃぁ、、、お言葉に甘えて」

「ん、ごゆっくり」

今日は、彼の優しさに触れてばかりだ。





プリ小説オーディオドラマ