どうしよう。...どうしよう。
黎ちゃんの僕に向けた呆れたような表情がどんどんとフラッシュバックする。
黎ちゃんが帰り、頭が真っ白になった僕は小林を置いて走って帰ってきた。
いつもの道に、黎ちゃんはいなかった。
《黎ちゃん、今日嫌な思いさせちゃった?》
《ごめんね、謝りたくて》
《明日、話すことってできるかな?》
2時間前に送ったメッセージは一回も既読がつかない。見ていないだけなのか。
酷いことを言ってしまった。
...でも、それには色々な理由があった。
黎ちゃんのお兄さん、そして小林。昼休みの後に起こった僕にとっての悪夢。
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あの時、黎ちゃんのお兄さんに呼ばれて空き教室に連れていかれた。
ーーーそこには、お兄さんと小林がいた。
小林は、嬉しそうに微笑んでいた。
黎ちゃんのお兄さんは終始眉間にシワがよっていた。何に怒っているかわからない。
お兄さんが言った言葉に、絶句した。
彼氏でもないしそういう関係でもないのになんでそんなことを言うのかわからなかった。
お兄さんが食いぎみで言うから僕は黙る。
何も言い返せない、気がする。黎ちゃんは優しかった。だけど本当は許されない行為なんだろう。
...そして、あの教室の出来事になった。
小林が「もうすぐ帰ってくるからいまから演技してくれる?」と言われてやった結果、見られた。
人生の終わりかと思った。
ああ、もう無理なのかなって思ったりしてしまった
多分無理だろうな。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。