松慎くんの教室の前までついて、息をのむ。
謝る勇気があまり無いけれど、泉先輩に言われたんだ。頑張ってみるしかない。
教室のなかを覗くと、松慎くんの姿が。
私は恐る恐るドアの前にたち、松慎くんを真っ直ぐと見て口を開いた。
私が松慎くんに話しかける前に、松慎くんが私以外の誰か______小林さんに話しかけた。
さっきと違う、呼び名。
「君」、じゃない。「小林さん」。
頭のなかが真っ白になった。
松慎くんが言っていることが分からなくて、少しめまいを起こしてしまった。
なんで、さっきは「あんな奴」で否定したのに今は否定をしないの?
「黎ちゃんと食べる方が美味しい」って言ってくれていたのに、今は小林さんなの?
昼休みのときの小林さんへの対応が、真逆。
急すぎる。急展開すぎる。
松慎くんと会ってそんなにたってもいないのになんでこんなことが起きるの?
ストーカーしてたんだよね、松慎くん。
会ったばかりなのにこんなに、振り回されるってどういうことなんだろうか???
ため息と一緒に出た言葉。
どうやら中にまで聞こえてようで、松慎くんが驚いている顔が見えた。
小林さんとも目が合い、小林さんは笑っていた。
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あのあと気まずい空気が漂うなか、私は見向きもせず家に帰った。
そして家に帰ると同時に兄のもとへいく。
...私もブラコン???
兄の言葉に少し冷たく返すと、兄は苦笑。
イケメン台詞を言って頭ポンポン、顔もイケメンだからときめく人はときめくんだろう。
...少なくとも私はときめかない。
兄から視線をそらして、ぼーっとする。
スマホに映し出されている15の通知を、私は見て見ぬふりをして消した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。